隣恋Ⅲ~のたりかな~ 44話


※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたりかな 44 ~

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 退く為にベッドに着いた手を掴まれた。

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「ちがうの」
「え、っと……?」
「だからそうじゃないの」

 と、言われましても……?

 私は中途半端に体を浮かせたまま、まるで腕立て伏せの途中みたいな恰好で固まった。
 見下ろすのは、私の右肘あたりを掴み直す愛羽さんで、その表情はどこか慌てている。

「ええと……その、愛羽さんの体がもう限界なのに私が更に欲しがったって事で……合ってますよね?」

 だから私は行為を止めようとしたのだ。途中で止められているけれど。

 そんな私の確認に、愛羽さんは「ちがうちがう」と首を横に振る。

「でもさっき嫌そうに」
「嫌じゃなくてっ……その…………恥ずかしかっただけ」
「え?」

 そんなの、初耳だったんですけど。と心の中で呟くが、思い返してみれば、顔は赤かった気がする。
 ……いやでも……なんか狼狽えてたし、……本当に嫌がってた訳じゃないのか……?

 まだ拭いきれない不安にじっと彼女を見つめる。けれど、その瞳を覗き込もうにも、愛羽さんはなんだか私の視線を避けるように目を合わせてくれない。

 ――……やっぱり……嫌なんじゃないか。

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 別に、取り繕う為の嘘とかつかなくていいのに。
 ここで私の機嫌取りしたって、意味ないのに。
 愛羽さんがしたくないセックスしたって、絶対楽しくないし、イケない事にもなりかねない。

 そんな事になってしまいそうなら、私は当然というか、勿論我慢するし、無理を圧してまで彼女を抱こうだなんて思わない。

「愛羽さん、無理なんてしなくていいですから」

 まだ肘を掴まれていたけれど、彼女の力なんて大したものではない。振り解くようにして、再度、愛羽さんの上から退きかけると、反対の腕も掴まれた。

「むっ、むりじゃなくてっ」

 必死に言い縋る彼女だけれども……うーん。だって、目も合わせてくれないし、恥ずかしかっただけと言いながら、身体が限界という私の言葉を否定もしない。
 どっちつかず、という表現はあまりよろしくないかもしれないが、そんな感じがして、対応に困るのだ。

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「ちゃんとするから、その、目、閉じてくれない?」
「目?」
「そう。それで良いって言うまで、開けないで?」
「……わかりました」

 一体何をしようというのか。
 とりあえず、腕立て伏せの途中みたいな恰好のまま目を閉じてじっとする。と、両腕の掴まれている感覚がなくなって、身体の下でゴソゴソと動く気配がした。

 ベッドが微かに揺れるので、愛羽さんが大胆に動いているのだろう。

 ――ほんとに、何してるんだ……?

 薄目を開けて確認してもいいのだけれども、もしかして、もう終わって寝るために濡れたアソコを拭っているのなら、それはやっぱり、見たら怒られるやつだ。

 どうしたものかなと思案していると、瞼の向こう側が重みを増した気がした。

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 ――これは……もしや。

「はい。開けていいよ」
「……」

 見えない。

 真っ暗で、なにも。

 どうやら、先程私が瞼の向こうが重たいと感じたのは、部屋の灯りが全部消されたからのようだ。
 彼女は、私の下から抜け出して電気を消して戻って来るという工程を、目を閉じさせている間にやっていたみたいだ。

「見えないんですけど」
「雀ちゃんがあんな恥ずかしい事言ってくるからいけないの」

 照れ隠しなんだろうけれど、ちょっとだけ怒ったような口調の愛羽さんが、私の腕に触れ、そこから伝って肩に触れた。
 私の両肩を引っ張り下ろすようにしながら「来て」という声は、甘い。

 こちらの心臓が跳ねるくらいには、可愛いくて、甘えた声だった。

「でももうしないん――」
「――いいから。きて……?」

 言葉を遮る声はさらに、甘くなっている。

 ……暗いと、こんなにも、可愛い声になるのだろうか。
 だったら真っ暗な中でセックスすればよかったと、後悔が過ぎった。

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