隣恋Ⅲ~のたりかな~ 42話


※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたりかな 42 ~

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 やり過ぎた、などと反省して落ち込んでいる暇はないのかもしれない。

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 流石に先程はやり過ぎたと自分でも思っているし、愛羽さんもそう思っていたようだったが……どうも、なんだか、求められている気がする。

 トロンとした瞳は私を見つめて逸らさないでいるし、手だって私の首に回されていて心なしか、引き寄せるみたいにしている。

 しかもさっきのあの言葉。あれは単純にキスだけを求めている訳ではない……と、思う。思いたい。

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 私はゆっくりと彼女へ顔を寄せてゆく。
 当然のように愛羽さんは瞼閉じていくけれど、私としては心配事があって、なんの躊躇いも迷いもなく口付ける、という心境にはなれない。

 だって、この超絶エロいムードでキスをしたならば、自分がまた、彼女を攻めたててしまうのは目に見えている。それこそ今度は、我を忘れて、という事にもなりかねない。

「……」

 完全に目を閉じて、軽く顎をあげて、いわゆるキス顔を私に晒している彼女を無言で見下ろす。

 ――かわいい……っ!!

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 ゴロゴロとベッドの上で転がりたい程の可愛いさを惜しげもなく披露してくれているが、こちらは飛びついてキスしたい気持ちとその先に暴走するであろう自分が見え隠れしていて、その葛藤で身動きがとれない。

 だって可愛いんだもの。可愛過ぎるのがいけない。襲いたくなるし、苛めたくなる。それを我慢できない自分が一番いけないのだが、可愛い過ぎる彼女もいけないと理不尽に思う。

 心の中のせめぎ合いに悩まされ鼻と鼻が触れ合いそうな距離で停止した私を、愛羽さんは不審に思わないはずがない。
 重ならない唇に痺れを切らせて、彼女はうっすらと目を開けた。

「……はやく」

 甘ったるい、甘えきった声。
 私は「でも」という言葉を呑み込んで、愛羽さんに口付けた。

 ああもう、どうして、こうも、自分は彼女の色気に弱いのか。

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 一度重ねてしまえば、後には引けない。
 啄むこと数度、すぐに舌が絡んで、先程の濃厚なキスを彷彿とさせる。

「んぅ……」

 鼻から抜けるような声は、これを待っていたのだと言わんばかりに気持ち良さげ。
 さらに、首に回されていた手がうなじをひっかくように力を込めるものだから、思わず、キスの合間に強く吐息が零れた。

 うなじを指で撫でられた。そんな程度の事で昂りが増すだなんて。
 悟られたくなくて、誤魔化したくて、キスを更に深めながら愛羽さんに覆いかぶさって組み敷いた。

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「は、ぁっ、…ふ……っ」

 あまりにも彼女が可愛い声ばかり聴かせるものだから、繋がった舌を伝わせて、どちらのものも混ざった唾液を流し込んだ。

 愛羽さんはすぐに、「ん、う」とくぐもった声を漏らすけれど、舌の根元に溜まったそれをゴクンと飲み下す。上を向いたままでの嚥下は空気も一緒に飲み易く、一際その音は大きく響いた。

 一旦キスを解いて唇を離せば、見下ろす彼女は甘く蕩けた表情しかしていない。

「かわいい、愛羽さん」

 キスの余韻がまだ残る舌でそう言葉を紡げば、私のうなじに添えられていた手がピクンとはねた。
 また「かわいくない」と言い返されるのかと身構えた私に、愛羽さんは照れたみたいに視線を逸らして、私の背中に両腕を回してぎゅうと抱き着いた。

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「……」

 愛羽さん十八番のあの台詞が、聞こえてこない。
 あれ? と耳を澄ませてみるけれど、聞こえてくるのは自分と愛羽さんの心音と呼吸音だけ。
 おかしいな……なんて考え始めたとき、愛羽さんが軽く息を吸う音が聞こえた。

「だれの……せいよ」

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