※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 41 ~
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「大丈夫……? ですか……?」
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横からのぞき込んだ愛羽さんの顔は、上気していて蕩けていて、まだ苦しそうにはふはふと半開きの口が酸素を求めていた。
頬をベッドにくっつけてこちらを向いている顔にかかる髪を指で掬って、耳の向こうへと流して、首筋に汗で張り付いた分も痛くないように剥がして、後ろへと流した。
そうやって乱れた髪を整えて、改めて顔を覗き込めば、涙の筋を発見する。
生理的現象だろうけれど、泣かせてしまった罪悪感がぶわっと込み上げてくる中、未だローターの振動の影響でむず痒さを残す人差し指で、涙で濡れた肌を拭った。
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甲斐甲斐しい、と自分で言うとなんだか恩着せがましい感じが出てしまうけれど。
私は甲斐甲斐しく世話をしているつもりだった。だけどその最中、はたと気付けば、随分と不機嫌そうな瞳が、こちらをにらんでいる。
「あ……」
バチンと視線が絡んで、思わず漏れた五十音の先頭の一文字。
彼女の眼光の鋭さに引き攣る頬に、冷や汗がたらりと垂れた。
「えと……、大丈夫、ですか……?」
「……」
むすりとした口は閉ざされたままで、何も言ってくれない。
だから余計、焦ってしまう。
「あの、その……あい、はさん?」
「……」
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「……だめって言ったのに」
「え」
やっと、喋ってくれた……!
ぱぁぁっと顔を輝かせかけたけれど、彼女の口から発された言葉はなんだか不穏な空気を孕んでいた。
「あれ、もう使っちゃ駄目っていったのに、使った」
「ごっ、ごめんなさいっ! つい……愛羽さんが可愛いくて」
「可愛いと思ったら何してもいいの?」
「だ、だめですよね、ごめんなさい」
しゅん、と視線を落とす。
確かに彼女の言う通りだ。
可愛いと思った人に何をしても許される訳もないし、恋人だからといって何をしてもいい訳でもない。
完全に、私がやり過ぎて、調子に乗り過ぎていた。
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「……ばか」
「はい……」
「ばかばか、ばーか」
「すみません……」
こんな可愛らしい罵倒如きで許してもらえるなんて思っていないけれど、謝る事しか思い浮かばない。
下げたままの視線をあげられず、「怒らせてしまった……どうしよう」と内心おたおたすることしかできない。
「反省してる?」
「してます。調子にのってやりすぎました……」
「じゃあいいよ。許してあげる」
「すみません…………え?」
許してあげるって……そんな、あっさり?
思わず顔と視線をあげれば、目の前にはなんとなく頬を赤らめた愛羽さんの顔。
「わたしも……良くなかった訳じゃ、ないし……?」
「へ?」
良くなかった訳じゃない? …………つまり……良かったってこと?
いまいち分かりにくい文章を脳内で解析していると、愛羽さんがうんしょと言いながら気怠そうに横向きに寝返りを打つ。
上手い具合にバスローブが胸を覆い隠してしまって、惜しいところだ。でも、見えそうで見えない感じはまたエロくていい。
「だから、……」
するりと私の首筋に手を回して、抱き着くみたいに擦り寄ってくる彼女が、私の首元で羞恥を混ぜた声音で囁いた。
「きもちよかったから……ゆるす」
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ズキュンと、胸を射貫かれた。
――な、な、な、なんなんですかその可愛い台詞。あと仕草……!
途端にバクバクし始めた心臓の傍に、彼女が居る。
別に心音が伝わってしまったからといって何もないのだけど、まさか今の台詞だけでこんなにドキドキしていると知られるのはなんだか気恥ずかしい。
そう考え始めると余計、心音は速くなるし、手には汗がにじむ。
なのに愛羽さんはどこかトロンとした瞳をこちらに向けて、囁いて訴えた。
「キス、したい」
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