隣恋Ⅲ~のたりかな~ 30話


※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたりかな 30 ~

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 鼻歌でも歌い始めそうな上機嫌さで、愛羽さんは私の右手を振り解いた。

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「焦ってる雀ちゃんも可愛いわ」
「そう言われても全然嬉しくないし、焦りは増すばかりですね」

 手の平同士をくっつけて、指と指を交互に食い込ませた右手が、ベッドに磔にされる。
 反対の手は咄嗟になんとか、こちらへ迫りくる愛羽さんの肩を押し返すポジション取りを出来たんだけど、やはり、下の位置というのは何事にも不利なのだ。

「なら可愛いさが増すばかりで、雀ちゃんはどんどん可愛いくなっていくのね」

 ふふん、と笑う愛羽さんは、自分の右肩を押し返す反抗的な手を一瞥した。”この手は一体どうしようかしらね?”といった具合に一瞬動きを止めた彼女は、私のバスローブの腰紐の結び目を瞬く間に解いてしまった。

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「ちょ、ちょっと愛羽さん……!?」
「これからえっちするのに、何の問題もないでしょう?」

 あ、ある! 大問題だ! どうして抱こうと思っていた私が真っ先に脱がされているのか! 先に脱がされるべきなのは、愛羽さんじゃないかっ。

 言い返す間もなく、隙の出来た私の手をかいくぐって、彼女は私の上にぴったりと寝そべった。
 どうやら膝を着いているものの、ほどんど私に体重を預けているようで、バスローブ越しにも彼女の豊満な胸がむにゅりと潰れてその柔らかさを主張した。

「うっ……」

 体に触れるその柔らかな感触と、眼前に迫った婀娜っぽい笑みをのせた相貌。
 喉奥で唸ったあと、私は必死に口を引き結んだ。これ以上情けない声は出すまいと。

 きっと今喋ったら、声が上擦る。そんな自信がある。

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「キス魔さんの事だからぁ」

 愛羽さんの指先が、固く結んだ唇をツゥ…と横に撫でる。それだけでふるっと緩んでしまいそうになる自分の弱い理性を恨む。

「さっきのだけじゃ、足りないでしょう?」

 底から響くような甘く低めの声に、焦る。
 だってこの声の質は、愛羽さんが、Sに傾いた時に聞く声だから。

「い…っぱい、キス、しようね?」

 まるでバスローブと背中の間に氷でも放り込まれたみたいに、ぞくっと悪寒にも似たものが走り抜けた。

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「あい」
「だまって」

 ベッドに縫い付けられた右手が握り込まれた。それと同時に低い囁き。次に下唇を舐められる。

 そんな……。そんなコラボレーションに私が負けない訳もなく、濡らされてゆく下唇を震わせた。

 ぬ…る……、とじわりじわり右から左へ這わされた愛羽さんの舌。たっぷりと纏った唾液をこちらに擦り付けるような舐め方に、閉じていた目をさらにぎゅっと閉じた。

「だめよ?」

 舌の感覚が退いたすぐ後に、囁く吐息が触れる。
 言われた意味が分からなくて、片目だけそっと開けて愛羽さんを窺ってみれば、「片方だけじゃなくて両方開けてて」と指導が入った。

 と言われたってことは多分、目を開けていて欲しいんだろう。
 一体なんでそんな事を……? と私は首を傾げた。

「ん? だって、ちゃんと、私にされてるってこと、見て覚えててもらわなきゃ」
「あ、愛羽さん以外にこんな事されませんって……」
「だぁめ。ちゃんとわたしのこと、見てて」

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 可愛くお願いされてしまうとどうも断れないし、努力してしまう。
 だけど、その努力も、与えられる快感の威力が強ければ強いほど、霞んでしまう。

「ん……」

 改めて唇を重ねて、先程下唇になすりつけられた唾液を塗り広げるように唇を左右に擦られる。それだけでも十分過ぎるくらいにエロいのに、時折、磔にしている右手を握り込んでくるものだから、その都度、どきりとしてしまう。

 お見通しなのだろうか。彼女は薄く笑みの形に口角をあげながら、私の下唇をゆっくりと食むのだ。そして唇で挟んだそのまま、顔を左右に揺らす。
 ぬるつくその感触がたまらないし、何よりも、じっとこちらを見つめてくる二つの瞳と視線を重ねていることが、恥ずかし過ぎる。

 思わず、目を閉じるまでいかなくとも、彼女の瞳から視線を逸らしてしまおうとするけれど、まるでそんな私を予想していたみたいに、愛羽さんが私の耳たぶを強く摘まんだ。

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