隣恋Ⅲ~のたりかな~ 27話


※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたりかな 27 ~

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「こんなカッコで言う事じゃないけどね」

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 少しお道化て、照れくさそうに言った愛羽さんは、寄り掛かっていた壁から背中を起こして、真っ直ぐ立った。
 そして、両手をこちらへ伸ばしてきて抱き着くと、私の胸に顔を埋めた。

「好き」

 シャワーを取り落としてしまうかと思うくらいに、心臓が跳ねた。
 甘い中に、一滴だけ切なさを混ぜたような声が、体の真ん中をぎゅっと鷲掴みにして、最後にするりと撫でて、どこかへ消えていく。

 肌と肌の境目さえなくなるくらいに、溶け合えてしまえばいいのに。と現実味のない考えが沸いてくるくらいには、彼女の告白に、クラリとした。

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 言葉を失っている私の片腕がぎゅうと彼女を抱き締める。

「……ふふ」

 胸に顔を埋めていた愛羽さんが、とつぜん、小さく笑う。
 何かと思って顎を軽く引いてその顔を覗き込むと、彼女は軽く顔をあげてから、また小さく笑った。

「雀ちゃん、すごくドキドキしてる?」
「ぁ、えっと…はい……」

 多分、くっついていたから、私の心音が聞こえたのだろう。
 素直に認めると、愛羽さんが悪戯っぽく笑ってから、背伸びをした。

 そして、「聞こえちゃった」と囁くように告げ、私の唇を奪った。

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 この場で、襲ってしまいたかった。
 そのくらい、愛羽さんが可愛い。
 好きだ。大好きだ。

 だけど、ここで事に及んだら、絶対転ぶ。タイルだし、痛いし、それはだめだ。

 キスを終えると、私はすぐさまコックを捻ってシャワーを止めた。

「ベッド、行きましょう?」
「あからさま」

 肩を小突かれるけれど、あんな、煽るような台詞吐いて仕草を見せ付けてられて、欲情した私に気の利いた誘い文句なんて出てこない。

 手を引いて浴室から出ると、体を拭う暇も惜しくて、バスローブで彼女の身体を包んだ。ふわっふわのコレはすぐに水分を吸収してくれるので助かる。

「愛羽さん、一人でベッドまで行けますか?」
「あら。エスコートなし?」

 てっきり一緒に行くと思っていた。そんな顔をする彼女に苦笑しながら、私もバスローブを着こむ。

「確かスポーツドリンクもあった気がしたんで、持っていこうかと思ってたんですよ」

 あの自販機に見た気がするんだけど、そこまでハッキリとは覚えていない。だけどスポーツドリンクがあればこんな時はありがたい。

「なるほど。じゃあ、先に行ってまってるわ」

 後でね? とさらりと頬を撫でてゆく後ろ姿にふらつく様子はない。シャワーで体を冷やすのは正解だったなと思いつつ、私はバスローブの腰紐を結んだ。

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 私の記憶は間違っていなかったようで、自販機にはスポーツドリンクが一本あった。それを手にして、ベッドへ向かい始めると、部屋がずぅん、と暗くなってゆく。

 見れば、愛羽さんが照明をコントロールしているではないか。

 だけど、思っていたよりは明るい段階で、光量を調節するツマミから彼女が手をはなしたので、私は上機嫌にペットボトルの蓋を開けた。

「どうぞ」
「ありがと」

 コクコクと喉を鳴らす姿も可愛いなぁ。
 きっと私は、何をやっていても、いつ見ても、愛羽さんの事を可愛いなと思ってしまうんだろう。

 返却されたペットボトルの中身を私もいくらか飲んで、蓋を閉め、電話の横へ置く。

「ねぇ、雀ちゃん」
「はい?」

 ベッドにあがりながら愛羽さんへ顔を向けると、頬をぷにりとつつかれた。

「さっきから、お顔がえっちなんですけど?」
「そりゃそういう事しか考えてないですから」

 開き直って言えば、愛羽さんはおかしそうに笑い、その後、こちらへ向けて両腕を広げた。

「きて?」

 昂りに、体中の毛穴が、開いた気がした。

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