※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 22 ~
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ひく、と私を見上げる愛羽さんの頬が引き攣った。
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私が結われた腰紐の端を引っ張るのと、愛羽さんが腰紐の結び目部分をばしっと手で押さえ付けたのは、ほとんど同時だった。
――しまった。解いてから言えばよかった。
結び目を押さえられると、こちらとしてはコレを解く事ができない。
「手を離していただけると助かるんですが」
「まだもうちょっとお湯が溜まるまで時間掛かりそうだから」
二人とも、にっこり笑顔で相手を牽制し合うけれど、不意を突いて私が唇を奪ってやったことで、均衡が崩れた。
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「ぅ、ん…っ」
思わず声を漏らした愛羽さんの片手が、私の胸元へと伸びてきて、Tシャツを掴んだ。抵抗したい意なのか、それとも縋っているのか。きっと前者なんだろうけれど、自分の都合の良いように考えたい私は、まるでその手が、縋ってきているように思えなくも無いのだった。
「……可愛い」
キスの合間に囁くと、腰紐の結び目を押さえる手がゆるんだ。その隙を突いて、しゅる、と引き解こうとするけれど、その全てを解く前に、はっと気が付いた愛羽さんの手が緊張を取り戻し、阻止された。
「だ、駄目だったら」
「言いませんでしたっけ?」
え? と不思議そうな顔をする愛羽さんに、私は再度、にっこり笑った。
「駄目って言われると余計、燃えるって」
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怯んだように瞳を揺らす彼女は、それでもなんとか気を奮い立たせて、私の気を逸らそうとお風呂場へと視線を放った。
「あれにお湯が溜まる前に脱いだら、きっと寒くて風邪引いちゃうから」
「体を熱くする手段なら心得ているので大丈夫。お任せください」
「なっ……」
言葉を詰まらせた愛羽さんに、にっこりと笑顔を向ける。
「えと、あの……」
たじたじと言った様子の愛羽さんが目を泳がせている。きっと、その脳内ではどうすればいいのかと物凄い勢いで思考が駆け巡っているんだと思う。
肉食獣に舌なめずりをされている小動物の気分なんだろうか。それとも、蛇に睨まれた蛙とか。まぁどちらでも、同じ事か、と内心小さく笑った。
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「きっ……」
意を決したように、彼女が口を開いた。
しかし、まだ迷いはあるのだろう。一文字目で言葉を詰まらせる愛羽さんに、私は軽く首を傾げた。
「き?」
胸元を掴む彼女の手が、さらに、きゅっとTシャツを掴む。
その仕草が、私を焚き付けているということを、彼女は知らずにやっているんだろうなぁ。こういう所はほんと、疎い。
それこそ、私よりも絶対、付き合った人の数は多いはずで、”煽る仕草”というものについては学ぶ機会があったはずだ。
なのにどうして、口では否定するような事を言っておきながら、”煽る仕草”をこうも易々としてのけるんだろう。
……まさか、わざと?
そう浮かんだけれど、すぐに打ち消した。
だって、愛羽さんは誘う気があるときはもっと意地悪な目をするから。
こうすれば貴女は転がされちゃうんでしょ、と言わんばかりの色を瞳に浮かべて、私の胸をグッと掴むような仕草を見せ付けてくる。
だから普段、こちらの服を掴んだり、潤んだ瞳で縋るように見上げてきたりするその仕草には、全くもって、そういう意味は込められていないのだ。
「キス、してあげるから、ぬ……脱がすのはもうちょっと待って」
…………これで、誘っていないのだろうから、愛羽さんは結構罪作りなひとだと思う。
――待てるかなぁ……?
と内心、不安をぼやきつつも、彼女からのキスは喜んで受けるのだった。
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