※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 21 ~
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愛羽さんが言うには、アメニティグッズの中に泡風呂の素があったそうだ。
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「雀ちゃん。外のお風呂からボディソープとか色々取って来てくれる?」
その間に泡風呂の準備しちゃうから。と、いそいそと鏡前へ行ってしまった愛羽さんの背中をなんとなく寂しく見つめる。
さっきまでベッドであんなにイチャイチャしてたのに、いざ次にする事が決まったらさっさと私の下から抜け出してベッドを降りてしまうんだもの。
――まぁ実際、セックスも出来る状態じゃないし時間を持て余してたから気持ちは分からなくもないんだけど。
だけど、なんだかなぁ……。
文句、という程でもないけれど、と心の中で呟いて、私はドアノブに手をかけた。
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外へ出ると、空はまだうっすらと明るい。
もう真っ暗だろうなと思っていた手前、星も見えない明るさに少し驚く。まぁそのおかげで、電気を付けなくても足元が見えて、露天風呂の横のシャワーの場所まで転ぶことなく来れた。
「……そういえばここで頭ゴンゴンしたから擦りむけたんだよな」
前髪の下の額を指先で擦ると、チリッとした痛み。たんこぶにはなっていないようで良かった。
これをどうしたのかと聞かれたときには焦ったけれど、まぁなんとか、誤魔化せたはずだ。
――そういえば……私の悪行が愛羽さんにバレているかどうか、確かめられてない。
下手に話題に出して、自分から暴露してしまうような事は避けたいし……どうしたものか。
室内の浴室から持ってきたグッズを抱えて戻りながら溜め息をつく。
口下手で嘘を突き通すことのできない自分に、この試練はなかなか難しい。
「下手に、言わない方がいいよなぁ絶対」
うん、絶対そうだ。と頷きながら室内に戻ると、目の前に愛羽さんが立っていた。
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「ぅわびっくりした!」
驚いたのは愛羽さんもそうだったようで、目をまん丸くして、胸をおさえている。
「すみません、驚かせちゃって」
「なかなか帰ってこないから、迎えに行こうとしてたの」
大丈夫よ、と首を振りながら愛羽さんがにっこり笑った。その笑顔につられるように笑えば、よしよしと頭を撫でられた。
「な、なんでいきなり?」
「ん? 可愛いかったから」
「は、はぁ……」
つられて笑っただけで可愛いとか、可愛いと思う部分がヘンなツボだなぁ。
愛羽さんに手伝ってもらって浴室へボトルを運ぶと、浴槽がモコモコと粟立っていた。
まるで、漫画の世界でよくある、洗濯機に洗剤入れ過ぎちゃいました状態だ。
まだお風呂の湯が満杯には遠いけれど、結構な泡立ち具合にわくわくする。
「おおすごい! 泡風呂なんて初めてです」
へぇ、こんなふうになるんだ! とはしゃぐと隣で笑う気配。
首を巡らせてそちらを見れば、なにやら、やたらと優しい表情で私を見上げている愛羽さんと視線がかちあった。
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「え?」
「素直で純粋でほんと、かわいい」
「は?」
泡風呂ではしゃいだら、……素直で純粋で可愛いんだろうか。
きっと、随分奇妙な顔をしていたんだろう。私の表情を認めると吹き出した愛羽さんに、慰めるみたいに頭を撫でられたから。
「たまに思うのよね。本当、わたしにもったいないくらい純粋な子だなーって」
しみじみそんな事を言われても、困るなぁ。
そんなこと、私だって思ってる。
愛羽さんは私なんかにはもったいないくらい可愛い人だって。
見た目だけの話ではなくて、中身……性格も含めて、本当に可愛い人だと思っている。年上でこんなに可愛らしいひとを、私は他に知らない。
「純粋なんかじゃないですよ」
「うそ。だって泡風呂であんなにはしゃげるのが純粋な証拠よ」
連れ立って浴室から出ると、扉を閉める。遮断されたお湯の熱気はもくもくと浴室へと篭り始めた。
もうすでに浴槽の半分くらいまでお湯が溜っていたので、ここで待つつもりなのだろうか。愛羽さんが鏡の方を向いて、背中を壁に預けた。
「そうでしょうか?」
愛羽さんの頭の横へ手を着いた私は、身長差を縮めるために少し前屈みになって、彼女を見下ろす。
「純粋な人間は、今すぐ貴女を脱がせたいなんて、考えたりしませんよ?」
そう言って、愛羽さんの浴衣の腰紐に手を伸ばすような私のどこが、純粋なのだろうか。
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