※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 19 ~
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喉の奥で、愛羽さんが唸った。
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潤んだ瞳が私を見上げている。その瞳の主は、唇に力を入れるようにして結んで、喉の奥で「う……う」と唸る。
それだけを見れば怒っている表情にも見てとれるのだが、明らかにそうではないと否定する大きな理由がひとつ。
彼女の顔が、真っ赤だということだ。
それこそ、火でも噴くんじゃないかというくらい、赤い。
こちらとしては、そこまで恥ずかしい質問を投げたつもりはないのだが、彼女にしてみればどうやら違うみたいだった。
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しばらく見つめ合っていたのだけど、ついに、固く結ばれていたその唇が開かれた。
「よ……」
「よ?」
待ち望んでいた質問の返答が、「よ」で始まるとは、一体どういう文脈だろう。
その「よ」が世なのか余なのか夜なのか謎だが、一番の有力候補は夜ではないだろうか。
「よ、よくそんな恥ずかしい事恥ずかし気もなく言うわね……っ」
雀ちゃんってほんとたまに物凄くキザになる……! と続け様に言われるが、気取っている訳でも、彼女を口説き落とそうとした訳でもない。
ただ思ったことを言っただけなのに、どうしてそうなってしまったのだろうか。
予想が大きく外れてしまった上に、愛羽さんにはなんだか怒られてしまった。いや、怒られるとは少し違うかもしれない。
恥ずかしさのあまり、八つ当たりをした、という具合に近いかもしれない。
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照れて恥ずかしがっているその顔は非常に可愛いくてずっと眺めていたいくらいなんだけど、「聞いてるこっちがはずかしくなるっ」と言いながら愛羽さんは手で覆い隠してしまった。
でも、両手で完全に覆い隠すんじゃなくて、片手で隠して、もう片手は私のTシャツを掴んでいる所がいじらしく可愛い。
「大好きです。愛羽さん」
手の向こうに隠れた彼女が目を閉じているので、想いを伝える手段は声。それと……。
「好きです」
手の甲にキスをした。
視覚がないなら、聴覚と触覚に頼るしかないのだから。
口付けたその手はピクンと跳ねたけれど、相変わらず手の向こうの人物は恥ずかしがっている様子。さっきよりも耳が赤くなっているのがその証拠なのだけど、今、その真っ赤な耳にキスでもしようものならば、物凄く、怒らせてしまいそうな気がする。
だからぐっと堪えて、私は再度、「大好きです」と囁いた。
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それを何度か繰り返したとき、ようやく、愛羽さんに動きがあった。
「~~~~~っストップ!」
ぱっと手を顔から退けて、さけんだ。
その後、真っ赤に染め上げた顔で、私をキッと睨んだ愛羽さんは、掴んでいたTシャツを引っ張って、噛み付くようにキスをした。
急な展開に目を丸くして、間近に彼女の閉じた瞼を見つめるけれど、その瞼は開きそうにもない。
二度ほど瞬きをしてから、倣うよう目を閉じた私は、やけに熱い愛羽さんの唇を啄んだ。
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幾度かそうして啄んだ後、ゆっくり顔を離すと、私に遅れること一拍、彼女が目を開けた。
「……ばか」
可愛い。
罵られているのに、可愛いとか思ってしまう私は馬鹿なんだろう。
「わ、わたしだってちゃんと雀ちゃんの事好きだけど……あんな恥ずかしいセリフで迫られたら、こっ、困るの……!」
やばい。可愛い。なんだこの人、ほんとに年上か。可愛い過ぎるんだけど。
「なんで困るんです?」
「だっ、だから恥ずかしいから……!」
ぎゅうう、とTシャツを握る手に力が篭ってくる。よっぽど、恥ずかしいんだろう。
「でも、恥ずかしいの我慢して、好きって言ってくれて嬉しいです」
私も愛羽さんが大好きですよ、とお返しに告げて、ぎゅっと抱き締めた。
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