※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 12 ~
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どっく、どっく、どっく、と耳の傍に心臓がある。
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気付かれてたのだろうか。私の悪行は。
「雀ちゃん、何食べる?」
ぐるぐると頭の中を駆け回る不安を、ぐいいと端っこへ押しやったのは、私に媚薬を口移しで飲ませた張本人の明るい声だった。
ベッドの横に立って、黒いファイルを捲るその人は、怒っている様子もない。むしろ逆に、機嫌が良さそうなくらいだ。
悪戯……っていうか仕返し? が、成功したから嬉しいんだろうか…。
「単品の唐揚げとかタコ唐揚げとか枝豆とかお酒飲めそうなメニューもあるよ?」
ちょいちょいと手招きされて、突っ立っていても仕方ないし、と愛羽さんの傍へ寄っていく。
「愛羽さん、お酒飲みたいんですか?」
昼間に缶チューハイで酔ってたのに、夜も飲みたいんだろうか。
私がチューハイの残りを飲んだときに「あぁわたしの」とか言ってたしなぁ。
「ん? わたしじゃなくて雀ちゃんが飲まなきゃやってられないかなーと思って」
「私が?」
顔を指差して問うと、愛羽さんはにやりと意地悪な笑みを浮かべた。
「媚薬と玩具、一緒に使われる時に素面で居られる?」
「……ジョッキでお願いします」
メニューはお任せします……と赤い顔で言えば、物凄く楽しそうな返事がきたので、私は顔面からベッドに倒れ込んだ。
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それから程なくして、愛羽さんがフロントへ注文の電話をしてくれた。
ベッドへ倒れ込んだままなんとなく聞いていると、今夜の食事は居酒屋メニュー的なものだった。
電話を切った彼女が黒いファイルを置いて、いそいそとベッドへあがり、私の隣へとやって来る。
「なぁに? もう効いてきてる?」
動かない様子を見て、愉しそうに尋ねる愛羽さんはどうやら、私を抱く気満々のご様子。
そうあからさまに”その気”を見せられるとこちらの方が赤面してしまう。
が、実際の所、体に変化はなく、当然心というか気持ちの方も、特に変化がないのだ。
「それが何にも」
よっこいせ、と両手で腕立て伏せのように支えて、自分の体を持ち上げ、ベッドの上に座る。愛羽さんと向かい合う形で、私が横に首を振って見せると、彼女は腕を組んで眉間に皺を寄せた。
「おかしいなぁ」
「おかしいなぁじゃないですよ、もう」
彼女に抱かれるのが嫌な訳ではないが、こうしていつ体に異変が起きるかを気が気じゃない状態が長時間続くのが、嫌なのだ。
なんというか……媚薬が効いてきて、抱かれたい、と感じ始めたとして……それを彼女に伝えるのも、なんだか恥ずかしいし……。
あぁほら、想像するだけで顔に熱が集中して、赤くなってくる。
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片手で顔を隠すように覆うと、こちらの様子に気付いた愛羽さんがずり、と寄ってきて、胡坐をかいている私の脚に、自分の脚を軽く乗せる。
折り重なるような足の構図は、猫の兄弟の昼寝を思わせるけれど……私はTシャツの他には下着しか身につけていないし、愛羽さんは浴衣の裾が開けていてその間から生足が覗いている状態だから、やけに、えろい。
「ふふふ、照れてる」
「……酒をください」
「もう少し待ってください」
私の口調を真似しながら、笑みを含んだ声で愛羽さんがジョッキの到着はもう少し先だと告げる。
「……効果が現れないのがいけないんですよ。効いてきたらもうちょっと理性も崩れるだろうに至って平常心なんですもん」
「それはそれは。お恥ずかしいでしょう。心中お察し申し上げますわ」
「揶揄わないでくださいよぅ!」
「じゃあ真面目な顔して、恥ずかしいよね、とか言われたいの?」
「うっ……それは……」
そんな事されたら余計恥ずかしい。
言い返せず言葉を詰まらせていると、愛羽さんは私の腰に軽く手を回してさらりとTシャツの上から撫でてきた。
「ちょっとだけ、キスしてみない? してたら、何か変化起きるかも」
「……ご飯来るのに?」
「ちょっとだけ」
――……そんな、可愛くキスしようとか誘われたら……するしかないじゃないか。
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