※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 11 ~
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「ど……どうして……」
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その物体を凝視したまま、思わず口から零れ出た言葉。
私のそれを聞きつけて振り向いた愛羽さんが、サイドテーブルの前で手にしていた黒いファイルをベッドに置いて、口元に笑みを浮かべたまま、こちらへと戻ってくる。
視界の端で彼女が寄ってくる姿を捉えつつも、やはりその物体……茶色の小瓶から目が離せないでいた。
テレビの横にちょこん置かれたその茶色の小瓶。剥がされたラベルの隙間からは瓶の中身が全て無くなっているのが見える。
――な、なんで蓋が開いてて中身がないんだ……!?
「あ、愛羽さん飲んだんですか?」
自分で? あの、恥ずかしがり屋な愛羽さんが媚薬だと分かっていながら、飲んだのか?
信じられない思いでやっと視線を引き剥がし、一歩の距離まで傍へ来たその人を見下ろす。
けれど愛羽さんは口元の笑みは相変わらずのままで、「んーん」と言いながら首を横に振った。
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「じゃあ……捨てたん、ですか?」
中身。と言う自分の声がちょっと残念そうな響きになってしまうのは……まぁその、いつかは飲ませられるかも、と期待していたからなので、仕方ない。
「捨ててないわよ?」
「へ?」
飲んでもないし、捨ててもない?
じゃあ一体どうして?
まさかコップに移して冷蔵庫に入れている訳でもあるまいし、と不審さを込めた眼差しを向けた私に、意味有り気な眼差しと笑みが返ってくる。
「捨ててないし、わたしは、飲んでないの」
「は……?」
「わたしは、ね?」
「え……」
え? ……え……?
それは……どういう……?
生唾を飲み込みながら、じわじわと湧いてきた一つの仮説に、心臓の音が少しずつ速くなるのを感じ始める。
――でも……あれは……夢であって……。
「ぐっすり寝てたから、覚えてないかしら?」
愛羽さんは意味深に呟いた後背伸びをして、固まっている私の肩に手を掛け、キスをした。
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「も……もしかしてあれって……」
「どれって?」
衝撃の事実がほとんど確信めいた力を帯びてきた中で、最後の悪あがきとばかりに私は呟く。
認めたくない気持ちの大きい私に対して、愛羽さんは悪戯っぽく意味有り気に笑ってばかりだ。
「だ、だからその、く、口移しで……」
「あ、覚えてるんだ」
ズドンと心臓を撃ち抜かれたのかと思うくらいに、大きく胸が跳ねた。
愛羽さんの「覚えてるんだ」という言葉はやっぱりつまり、私が夢だと思っていたあの一連の事は……事実、になるのだろう。
愕然としてそんな悪戯をした犯人を見下ろすけれど、彼女は悪びれたふうもなく、小首を傾げた。
「おいしかった?」
「味なんて覚えてませんよ……」
「そこは覚えてないんだ」
飲まされたのは覚えてるのに。と彼女は笑う。
私は片手で自分の顔を覆うと、深く溜め息をついた。
「なんでまた……私に飲ませたりしたんです……?」
だったらまだ捨てた方がマシだったのに。と思う。
まだ効果は現れていないけれど、私がその…抱かれる側になるってことだろう?
抱き足りなくて寝込みを襲うくらい性欲が有り余ってるのに……そんなタイミングで飲まされるだなんて。
「仕返し」
え……?
と口から零した私を置いて、愛羽さんは踵を返し、ベッドの方へ歩き出す。
仕返しって……散々、抱いた事への……?
それとも。
それとも寝込みを襲った事への……仕返し?
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