※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 10 ~
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「照れ屋なんだから」
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あからさまに距離をとった私に小さく笑った彼女は、自分の額を指差した。
「雀ちゃん、おでこ、打った?」
「は?」
「寝てる時に気付いたんだけど、ちょっと赤っぽくなってるし、擦り傷もできてたから」
おでこに?
愛羽さんの指差した位置あたりを擦ってみると、確かにチリチリと痛むかもしれない。肌も少し荒れた手触りがするのは、擦り傷でガサガサになっているからだろう。
だけど、転んだりもしてないし、額を打った記憶も別に……。とそこまで考えた瞬間に、甦る記憶。
露天風呂横のシャワーに打たれながら、自己嫌悪の限りに額を壁に打ちつけた。
それだ! と心の中で叫ぶけれど、実際それどころじゃない。
寝起きで忘れていたけれど、私は愛羽さんの寝込みを襲ったのだ。
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「ろ、露天風呂でちょっと……」
「打ったの? 大丈夫?」
大丈夫です、と言うのに、愛羽さんは心配そうに私の前髪をかき上げて、額の様子を窺う。心配してくれているのが分かるから、ちょっと顔を俯けて、患部を差し出すようにしてみせた。
と、視界に飛び込む、浴衣の合わせ。
キチンと襟を整えて帯を締めているので、谷間が見えるとかはないのだけど、女性らしいふくらみを描く胸のラインを服の上から見ただけで、私の脳裏に、ベッドで見た裸の胸を連想させる。
「だ、大丈夫ですよ。ちょっと擦ったくらいですし」
「本当に?」
「ほ、ほんと、ほんと」
なら……いいけど。と前髪から手を退けた愛羽さんから離れた私は、溜め息を吐いた。
まさか、あの時のが傷にまでなっているとは。
超絶自己嫌悪中だったから、仕方ないとはいえ、愛羽さんに心配かけたのはよくない。色んな意味で、よくない。
胸に過剰に反応してしまう自分も、よくない……。
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「冷やさなくて平気?」
「平気です、平気」
心配してくれるのはありがたいけれど、今はちょっと、駄目だ。ていうかこの件に関してはいつでも駄目。
わ、話題を変えたい。
「あ、愛羽さんお風呂、いつの間に起きてお風呂入ったんですか?」
無理矢理過ぎる話題転換。
一瞬、キョトンとした彼女が、左斜め上へ視線をあげて思い出す素振りをする。
「20分前くらいかしら? 外のお風呂行って、シャワーだけ浴びて帰ってきたから」
「そうなんですか。全然気づきませんでした」
あははは、と乾いた笑いを立てる私に視線を戻した愛羽さんは、どこか意味有り気な眼で見つめてくる。
「ぐっすり、寝てたもんね」
「え? ええ、そうですね……?」
な、なんだ? なんでちょっと笑ってるんだ……?
瞬きを繰り返す私の唇にキスをした愛羽さんは、まるで品定めするみたいに至近距離でじーっと私の目の中を覗き込んでから、離れた。
「雀ちゃん、お腹、減らない?」
ソファから立ち上がった彼女が、浴衣の裾を軽く翻してベッドの方へと向かう。
「あ、そうですね! ご飯食べましょうか」
どうしてあんなふうに様子を窺われたのかは謎だけど、食事となれば、この雰囲気も一掃されて、話題もガラリと変わるだろう。そうすれば、寝込みを襲った事も私の頭の中から薄れるはず!
幸いにも、愛羽さんがそのことに気付いた様子はないし、このまま誤魔化しきれば平気なはずだ……!
私の体に掛けてあった浴衣を軽く畳んで、ソファに置いて立ち上がる。
愛羽さんの後を追って、畳の上をてけてけと数歩歩いた瞬間、目に留まったその物体に、私の足がピタリと動きを止めた。
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