※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 8 ~
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…………なんか……変な夢みた気がする……。
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なんの夢だったっけ? と目を開けて、見慣れない天井を眺めながら思い出そうとしてまず浮かんだのは、「寝なさい」という甘くて優しい声だった。
誰の声だ……?
と疑問が浮かぶけれど、まぁ夢だから誰の声とかないのか。と思い直して、身体を起こした。と、するりと肩から落ちる布。
咄嗟に手で掴んで受け止めた布に目を遣ると、それは広げられた浴衣だった。
どうやら体の上に掛けられていたようで、いつの間に? と首を傾げたところで名前を呼ばれた。
「起きた?」
はっとして声のした方を振り向けば、L字型ソファの短いほうへゆったりと転がっている愛羽さんがいた。
「愛羽さん」
どうやらこの浴衣は彼女が私に掛けてくれたようだ。
それにしても、いつの間に、目を覚ましていたんだろう。
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まだ寝ぼけ眼の私にちょっと笑った彼女は体を起こして、わたしの隣へ座り直した。寝ぐせでもついているのか、「おはよ」と言いながら私の髪を撫で梳いてくれるその手は優しくて、何か記憶に新しい。
――ぅん……?
まるでデジャヴのような感覚に襲われて、眉を顰めると、私を見上げる愛羽さんの顔が少しだけ曇った。
「どうかした?」
「あ、いえ、なんでもないんです、なんでも」
それより、体、大丈夫ですか? と私は気を逸らすように、半ば無理矢理話題を変えた。
頭を撫でられて顔を顰めるとか、愛羽さんからしてみれば、いい気はしない行動だろう。
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「ん? んーと、怠さ倍増って感じかな」
「う゛……ご、ごめんなさい」
朝も身体怠いって言ってたしなぁ……。
しゅんと身を縮こまらせると、愛羽さんは微笑んで、「気にしなくて大丈夫だから」と軽く背伸びするように体を寄せてきて、キスをくれた。
「雀ちゃんは?」
「は?」
「体、なんともない?」
「え? ええ、べつに……?」
どうして、そんな事を聞くんだろう。私は抱かれてないのに。
あぁ、あれかな。体勢がきついだどうだの話をしたから、腕が疲れていないかとか、そういう心配なのかな?
あ、それともベッドでなく、ソファで眠ったから?
特に不調もない体なのでとりあえず、大丈夫だと頷いたものの、首を傾げた私に、愛羽さんはソファをぽんぽんと叩いた。
「ほ、ほら、ここで寝たりすると、疲れとか、取れないじゃない?」
あぁ、そっちの意味の質問だったのか、と納得して、私は笑顔を浮かべた。
優しいんだなぁ愛羽さん。
「全然平気ですよ。家でだってソファで朝まで寝るときあるし、慣れてますから」
バイトで疲れて、帰ってくるのが深夜3時とかになったら、そのままソファで寝ちゃうときがある。だから慣れっこで平気平気と浮かべた笑顔が、瞬間的にフリーズした。
――ヤバイ。しまった。
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不用意な発言をしてしまったと後悔の嵐が胸中で巻き起こっているのだけれど、もう遅い。
目の前の私の恋人兼健康管理大臣が、まさに柳眉を吊り上げると言った具合に怒っているのだから、もう、もうもう、もう遅い。遅すぎる。
「……」
そろー……っと目玉を動かして視線を逸らしていくけれど、「ちょっと?」と棘のある声で呼び止められて、すごすごと、愛羽さんへと視線を戻した。
「……ハイ……」
「どこで、いつまで、寝てるって?」
「……」
怖い……。
そ、そりゃあ私の体調とか心配してくれるから、こうして怒ってくれてるんだけど……こわい。
「慣れてる、ですって?」
「ご、ごめんなさい……疲れて帰って一旦ソファに座ると……そのまま……」
いつの間にか意識を失っていて、気が付いたら朝なのだ。
駄目だとは思うんだけど……つい、帰ったらソファに座ってしまうのだ。
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