※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 6 ~
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お湯を吐き出す蛇口の横に腰を落ち着けた。
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露天風呂の四隅にある蛇口のうちの一つの傍に座って、熱すぎずぬるすぎずという適温に体を和ませる。
蛇口から出る湯はさすがにずっと触れていると熱いので、ぬるま湯と混ざり合った所の湯を両手で掬って顔を洗った。
石に背中を凭れさせて、空を見上げるともう日は傾きつつある。
はっきりとした時間は分からないけれど、まぁ夕方くらいなのかなぁとぼんやり考えた。
ぽちゃん、ぽちゃん、と片手で湯を掬っては水面に落とす。
少し泳いで体を動かしたら、気が晴れたんだろうか。なんとなくスッキリしている。
だけど、やってしまった事は消えないし、彼女の隣に戻る気持ちの決心もまだつかない。
「でも1時間も2時間もここに居る訳にいかないしなぁ……」
はぁ、と溜め息が水面を揺らす。
お湯の中で膝を立てて体育座りをして、垂れてきた前髪をかき上げた。
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あのひとの傍にいると……どうしても、手を伸ばしたくなってしまう。
ここが、ラブホテル、という場所だからなのかもしれない。
家で隣合わせに座っていても、あんなふうに手を出したりしない。精々、キスくらいだ。
ま、まぁ家で全裸で寝てることなんてそうそうないし、基本的に愛羽さんが暇そうにしていることとか、昼寝をしているとか、あんまり無いんだけど……。
「ラブホテルってそーゆー事するところだしなぁ……」
ここに居るから抱きたくなるとか手を出したくなるとかじゃないんだけど、ここに居るから”余計”抱きたいし手を出したいんだと思う。
彼女が起きていれば問題ないんだろうけど……寝ていたし、体力使わせたあとだったから、問題なのだ。
「起きたら……正直に話して謝ろうか……」
い、いやでも……もし、もしも「寝てるわたしにそんなことしたの!? 最低!」とかなったら嫌だし……それならいっそ、黙ってる方が……。
「う゛ーん゛」
唸った私は溜め息を吐きながら、立ち上がった。
左手で蛇口を閉めて、他の3ヶ所のそれも閉めるためにざっばざっばと、温かくなったお湯を蹴って進む。
「嫌われたくないなぁ……」
だったら最初から襲わなければよかったのに、というもう一人の私が脳内で言う言葉には、ただただ、項垂れるしか出来なかった。
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それからしばらく湯に浸かっていた私は、腹を括って立ち上がった。
卑怯かもしれないが、この作戦で行こう。
もしあの時、ぐっすり眠っていたのなら、言わない。
少しでも気付かれていたら、正直に言って謝る。
これでいこう。
たぶん、これが、最良だ。
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露天風呂から出ようと思って気が付いたのだけど、体を拭くものが、ない。
ここにはバスタオルも何もないし、わたしは下着一枚身につけたままで来たので、浴衣もない。
……仕方ない。
私はその場でぴょんぴょんとジャンプを100回繰り返して体から水滴を落とす。
拭くものがないので、こうして水を払って、室内に入るしかない。
100回も跳べば、ほとんど垂れるような水気はなくなる。
最後に頭をぶるぶるっと振ってから扉を二つくぐる。
愛羽さんがまだ眠っているだろうから、静かに。静かに。
ちらりとベッドへ視線を走らせると、もっこりと盛り上がった布団が目に留まる。
ここからでは遠くて、その布団が規則的に上下しているかは見えないけれど、この静かさだと、たぶん、眠っているのだろう。
私はなんとなく、安堵の息を吐いて、バスタオルのあるお風呂場の前へ向かった。
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