※ 隣恋Ⅲ~のたりかな~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたりかな 1 ~
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すー、すー、と隣から寝息が聞こえる。
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規則的なその寝息は愛羽さんの入眠度合いを示している。
聞こえてくるその寝息の数を、頭の中でカウントして、丁度30数えてから、私はゆっくりと目を開けた。
私が照明を全部消したせいで、窓もないこの部屋の中は真っ暗。
何にも見えない。
枕を並べて転がる距離でも、相手の顔も拝めないというこの苦痛。最上階なら天窓のひとつでもつけてくれたっていいじゃないかと、ラブホテルの造りに心の中で不平を並べてみせるも、すぐに、ものすごく小さく絞って電気つければいいか、と思い直す。
比較的、眠りが浅いタイプの愛羽さんは、一緒に眠っていても、私が身動ぎするとよく目を覚ます。
家のシングルベッドでは狭くてやはり二人でぎゅうぎゅうとくっついて眠るから、起こしてしまう確率は高くなって仕方ないんだろうけれど、やっぱり申し訳ないし、もう少し広いベッドで広々と一緒に眠りたい。
ゆっくり、ゆっくり。布団の中から腕を引き抜いて、布の擦れる微かな音にさえ注意しながら、ヘッドボードの向こうの照明のボタンに指を伸ばした。
さすがに、起き上がってベッドを揺らせば彼女は起きてしまうだろうから、どこの照明のツマミかは分からないけれど、指に触れたツマミをゆーーーっくり、回す。
じり、とソファの上あたりの照明が視界の端でぽぅっと灯ったのを確認して、さらにじわじわとツマミを回してゆく。
ベッドの上でなければ、程々に明るくしても構わないだろう。あまりに真っ暗すぎて明日の朝まで眠ってしまった、なんてことになったら、悔やんでも悔やみきれないから。
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満足いくまで、ソファの上の照明を明るくすると、愛羽さんの寝顔もよく見えるようになった。
幸い、明るくしても彼女の睡眠には影響もないようで、ほっと息をつく。
――可愛いなぁ。よく寝てる。
こちらへ向いた横向きで眠りについてくれた事に感謝しながら、おやすみのキスを思い出してにやける。
真っ暗な部屋の中、そろりそろりとわたしへと伸ばされた手が、最初にちょんと触れたのは頬骨だった。それから指先が鼻の位置を確認して、頬に手のひらが当てられる。
狸寝入りをしている事がバレないように必死で、規則正しい寝息を心掛けていた私は、彼女がどうするのかも予想できずに居た。そこへ、唇の丁度横に柔らかいものが触れて、すぐ離れた。
もちろん、それが愛羽さんの唇だということはすぐに分かったけれど、なんだか中途半端な位置だなぁという感想を抱く。頬にキスという程でもなく、唇にキスという程でもない。
暗すぎてきっと口の場所が分からないんだろうな、と内心笑みを浮かべる。その内心が、表情に出てしまわないように必死に自制しているところに、再来する柔らかな感触。
今度は唇と鼻の間あたり。
愛羽さんの下唇とわたしの上唇はなんとか重なっていたけれど、どうも、もう少し惜しい。
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もどかしく思いながら耐えていると、やっと、重なる唇同士に、胸がぽっと温かくなる。
いや、それまでの二度のキスでも十分ほっこりはしていたのだけど、やはり、諦めずに唇と唇がちゃんと重なるまでチャレンジしてくれて、それが成就されたときの感覚は一入だ。
思わず啄んでしまいそうになる自分をなんとか自制していると、愛羽さんがそっと離れて、満足そうに鼻から息を抜いた。その可愛さたるやなんとも、抱き締めたい。
だけどもやはり狸寝入りがバレてしまうので奥歯を噛みしめ自制をする。
そうこうしていると、彼女はぽす、と枕に頭を預けて、しばらくの後、寝息を立て始めたのである。
そして冒頭、となる訳なのだが。
私が何故、狸寝入りをしていたかと言えば、だ。
――…………かわいい……。可愛い過ぎて……ムラムラする。
という理由からだった。
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