※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 73 ~
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ごめんね、雀ちゃん。
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そう言ってまた抱き寄せてキスをすると、彼女の身体からほっとしたように力が抜けた。
強張りの抜けたその身体が愛しくて、胸が少し、苦しい。
申し訳なさと、嬉しさが抱き合って、わたしの身体の中で暴れていた。
「ごめん。泣かせて」
唇を啄む雀ちゃんが、その合間に告げた言葉。
え? と言い掛けて、ふっと記憶に甦ったのは、10秒近く見つめ合ったドライアイ状態でわたしの目が潤んだあの瞬間。
そういえば、あの瞬間から雀ちゃんが冷たい目をしなくなった。もしかしたら、わたしが泣きそうになったって勘違いして……。
「いいの。だってわたしが間違ってたんだもん」
「でも、……でも。……怖かった?」
「雀ちゃんの事?」
「うん」
唇をはじめ、顔中にキスの雨を降らせながら雀ちゃんは不安そうに頷く。
この様子だと、確実に自分が泣かせたと思っている。
――流石にこの歳にもなったらあのくらいじゃ泣かないわよ……。
とは思うものの。
女は計算高く強かなのだ。
「こわかった」
と、戸惑いを声に含めて告げた。
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「ごめん。やっぱり怖かったよね」
「ん……大丈夫」
でも、と続けて言う。
「間違ってたわたしの事、ちゃんと怒ってくれて嬉しかった」
これは、本心。
きっと、雀ちゃんの中には嫉妬もあって、あの瞬間爆発的に怒ったのだろうけれど、あのとき彼女の根底にあった”遠慮”をわたしがし過ぎていると感じた。それだと思う。
まぁ、遠慮の塊とも言える雀ちゃんに「遠慮されたくない」なんて言われる日がくるとは予想もしていなかったけれど、嬉しかった、本当に。
「わたしのこと、見ててくれてるんだなーって思って」
彼女の頬に手を添えて、唇を重ねる。
感謝と愛情を込めたキスを贈り、ゆっくりと目を開けると、何故か雀ちゃんがうるうるの瞳でこちらを見つめていた。
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「いい子でよかった……」
「は?」
意味不明な雀ちゃんの台詞に、わたしは素っ頓狂な声を思わずあげた。
だって、「いい子」だなんて。
この場にいるのはわたしと雀ちゃんで、年上と年下なんだけど。
まさか、彼女から「子」と指す言葉を遣われるだなんて夢にも思ってもみなかった。
だけど雀ちゃんはわたしの肩を抱く腕にぎゅっと力を込めて、熱の篭ったキスをくれる。
「怒ったら嫌うような性格じゃなくてよかった……」
「あのね……そんな子供みたいな性格なわけないでしょう?」
まるで年下を相手にしているような事を言い始めた雀ちゃんのおでこを小突く。
「貴女の目の前に居るのは歴とした大人の女よ?」
「ま、まぁそれはそうだけど」
自身の失言にやっと気が付いたのか、目を泳がせる雀ちゃん。
そういう所は大人っぽくもなんともないのに、さっきみたいなミラクルを起こすのだからまったく油断できない。
「怒られたくらいで嫌うような関係性しか築けてないとでも思ってるの?」
「そんなことは! ……ないはず」
「わたしの現在の恋人さん、そこは自信もってくれなきゃ困るわ」
小さく笑って、わたしはハの字眉の恋人にキスをした。
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ちう、ちうと啄む甘いキスを終えて唇を離すと、雀ちゃんは少しばかり居心地が悪そうにしながら、「白状する」と眉尻をさげた。
「半分は嫉妬で怒った……ごめん」
「知ってる」
「え!? なんで!?」
まったくこの子は。
バレていないとでも思っていたんだろうか。
「昔の男のせいでってちゃんと言ってたじゃないの。分かるわよ」
「……余計、泣かせて、ごめん」
平然と言ってのけると雀ちゃんの顔は引き攣ったが、すぐにしゅんとして、わたしの機嫌をとりたいのか慰めたいのか。頬をぺろりと舐めた。犬かしらこの子はホントに。
半分は自分の嫉妬で怒ったのに、嫌わないでくれてよかった。嫉妬と分かっていても嫌わないでくれてよかった。
きっとそんな事を思っているのだろう。雀ちゃんは、ぺろりぺろりと舐めては、キスをする。
「ん…は………」
この敏感な身体にとってそれはくすぐったいというより、快感として、受け止めてしまう。
ぞく、と粟立った頬の肌を舐めた雀ちゃんの耳に、わたしの吐息混じりの甘声が届いてしまったとき、肩を抱いていた手が僅かに跳ねた。
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