※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 71 ~
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「不安、だったの?」
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こく、と頷くわたしの目は、泳ぐ。
だって、本当にまじまじと彼女が見つめてくるんだもの。
「キスしてたら、不安じゃなくなるの?」
また、頷く。
でも、以前、わたしは聞いてしまったのだ。「セックス中、やたらキスしたがる女っているけどこっちからしてみたら腰は振らなきゃいけねぇし微妙に中腰っつうか体浮かせるっつうか、腕で支えなきゃならんし、動きながらだと下手したら歯打つし。下触り始めたらキスはたまにしか出来ねぇよな」という、男の生の声を。
昔、付き合っていた人と、その友人が家でお酒を飲みながら話していたこと。
その時わたしは酔って眠っていたのだけど、夢現に聞いたその言葉だけは今でもしっかり覚えているし、その後付き合う男性との行為の際、あまりキスを求めなくなった原因だ。
おまけに、雀ちゃんは腰を振る訳ではなく、腕を伸ばした状態。
わたしの身長が小さいのがまだ救いな部分はあるけれど、それでもやはり、体勢がきつい、という事実はあるだろう。
わたしがたまに、攻める側になった時は随分、腕に負担がかかるからなんとなく、分かるのだ。
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「ごめん、たまにでいいから。気にしなくていいから」
雀ちゃんの優しさに甘えて、無理な注文をしてしまった自覚はあるので、早々に撤回する。
雀ちゃんは、点にしていた目をどこか嬉しそうに和ませて、わたしの唇に小さくキスを落として、顔をあげた。
――よかった。深刻に捉えてなかったみたいで。やっぱり、余計なことは言わない方が得策ね。
と胸の内でほっと息を吐きながら、一瞬で唇から離れた温もりに心がざわついた。
見ないふり見ないふり。と繰り返しながら、動きにくいだろうし彼女の肩からも手を離した瞬間だった。
「息し辛くない?」
「え?」
「だって、喘ぐから」
「え、え?」
「喘ぐでしょ? 愛羽」
当然。というように問い掛けられたその事に戸惑うも、最後の呼び捨てにドキンと胸が高鳴ってしまう。
い、いやいや、今は息し辛いどうこうの話だから……と気を取り直すも、高鳴りの余韻が頭をほわほわさせて、妙に考えがまとまらない。
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「どういう、こと?」
ちょっと高くなった体温を感じつつも、いい加減まとまらない思考に観念して、雀ちゃんに首を傾げた。
彼女はというと、なんだか嬉しそうに目元と口元を緩めて、こちらを見下ろしている。
「ん? だから、キスしながらローターあてると、口塞いで上手に喘げないし、息もし辛いでしょ? ってこと」
「え……えっ!? だ、だからそれは体勢的に辛いと思うからいい」
「いいとか言わないでよ。私はずっとキスしてたいんだから」
わたしの台詞を継ぐようにして遮った雀ちゃんは、やっぱり嬉しそうに笑う。
でも、でも大変なんじゃ……と言い掛けたわたしを更に口付けで遮った彼女は、劣情を匂わせるように唇の端を舐めながら、低く、囁いた。
「その、体勢的に辛いって、誰に言われた?」
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ゾク……ッ。と、這うような寒気が背中にべったり張り付く。
まるでナイフを突きつけられて脅しを受けたみたいにピシリと体が固まって動けないでいるわたしの頬を、蛇のようにチロチロと舐めてから、雀ちゃんは少し、顔の距離をとった。
「誰?」
言葉少なに問う彼女が喋る度、寒気が背中でざわつく。
「じ、自分で考えたのよ。わたしだって、抱く側になる時もあるじゃない?」
嘘、ではない。確かに自分でも、考えた。
そんな言い訳を脳内で並べるわたしを、見透かしたような瞳で彼女は見下ろしつつ「ふぅん……?」と冷ややかに唇の端だけで笑んだ。
そんな笑い方は普段しないし、何よりさっきまで嬉しそうに弧を描いていた瞳が冷たく光るその光景は、わたしの網膜に強く、焼き付いた。
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