※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 63 ~
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プツ、プツ、と鳥肌の凸ひとつひとつに爪を引っ掛ける。
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それ程ゆっくりと緩慢な動きをされると、期待がさらに膨らんでしまう。
横を向いたまま、ふ、ふ、と漏れ出る吐息を手のひらでなんとか抑えるものの、雀ちゃんには絶対にバレているだろう。
「早く、触って欲しいとか、思ってますか?」
見下ろしてくる雀ちゃんからそんな言葉を浴びせられ、わたしは下唇をぎゅっと噛んだ。その痛みですこし、冷静さを取り戻したけれど、胸にある指の感覚が完全に気を取り戻すことを許さない。
少し遠くにある、サイドテーブルとその上の電話を合わない焦点の目で見つめて気を逸らそうにも、刻一刻と尖りに近付いてくる指を意識せずにはいられなかった。
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「ねぇ」
愛羽さん。と呼んだ雀ちゃんの声が一段、低くなったのを、わたしの耳は聞き逃さなかった。
ひく、と跳ねたわたしを、彼女も見逃さずに、指先で胸のピンク色の周りをぐるり、ぐるり、と撫でながら雀ちゃんはわたしの耳に顔を寄せた。
「ココ、触って欲しいですか?」
耳朶に触れる熱気と湿り気。鼓膜を震わせる低くて意地悪なその声。
胸を焦らすよう擽る甘い指先。その全てがわたしをじわじわと攻めあげるように胸を締め付けた。
その締め付けは肺から息をも押し出すように零れさせ、噛んでいた下唇を解放し、吐息を手のひらにぶつけた。
ぎゅっと閉じた瞼の裏はチカと白く一度光るし、胸は苦しいくらいに甘くて切ない。
触られたいなら、ちゃんと言わなきゃ。という言葉に甘く押し出されて、わたしの口から言葉が零れた。
「さわって……」
横を向けていた顔を、愛しい人へと向け直す。
「おねがい」
言葉と共に、自分の瞳が揺れたのが、はっきり分かった。
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見上げた雀ちゃんが、食いしばった歯の隙間から、くふ、と息を零した。
まるで昂る自分を抑えようとしているかのように私の目に映った彼女は、一度、ぎゅっと目を閉じてから開き、わたしを抱き締めた。
背にあった腕が力強くわたしを持ち上げて、もう片方の腕がぎゅうと引き寄せる。
そうやって抱き締められたまま、突然のことに目を白黒させていると、彼女が耳元で囁いた。
「すみません。優しくしようと努めてたんですけど……やっぱり、興奮したら、止まらなくて」
「え?」
謝罪の言葉に驚き、軽く目を見張ったわたしの耳の横で、彼女は続ける。
「優しくしたいんですけど、気付いたらどうしても、いじわるしてて……すみません」
はぁぁ……と溜め息を吐く彼女。
――やっぱり……いつも以上に優しかったのは……気に掛けてくれてた結果だったのね……。
「愛羽さんは私の気持ちも考えて、電気の事とか言ってくれたのに。ごめんなさい」
抱き締める腕の力を強めながら、雀ちゃんはまた強めに息を吐いた。
やはりそれは自身を落ち着かせる為の呼吸法なようで、しきりに、深呼吸を繰り返していた。
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そんな彼女に抱き締められたわたしは、心臓が異様に高鳴るのを感じた。
いや、心臓が高鳴るというよりは、胸が高鳴るといった表現の方が正しくて、今のわたしのことをよく体現できている言葉だ。
鼓動はもちろん速いのだけど、その心臓の奥の胸が、きゅん、きゅん、と鷲掴みを繰り返されたように、締め付けられている。
だって彼女は、わたしが「優しくして」とお願いしたからなのか、そうでないのか分からないけれど――きっとそうだと思うけど――昂る自分を抑えつけて、意地悪しそうになる自分をぐっと堪えて。
あんなにも優しく真綿で包むようなやさしさをわたしに与えてくれていたのだ。
だけどそうしているのも限界だと、ごめんなさい、と謝るのだ。
わたしが照明の事に気が付けたきっかけだって、彼女自身がわたしに与えてくれたものなのに、さも「愛羽さんは優しい」と言わんばかりに、謝る。
「謝らなくても、いいのよ?」
というか謝る必要なんてひとつもない。
むしろわたしが、と思っていると、抱き締める腕が緩んで、耳元にあった雀ちゃんの顔が目の前へと現れた。
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