※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 58 ~
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ずるい。ずるいずるい、ずるい!
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そんなふうに甘く尋ねられたらそんなの、教えてしまう以外、道がないのは決まってる。
目の前に迫った耳に噛みつきたいのは山々なんだけど、ぐっと堪えて、代わりに、告げるは質問の答え。
「きもち、いぃ……から、だめ……」
羞恥にか細くなった声でそう囁くと、雀ちゃんは小さく頷いてからわたしの唇の前から耳をそっと退けた。
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優しい誘導尋問の結果、本音を暴露してしまったのだけれど、これがまた恥ずかしさが込み上げてくる。
さらに言えば、顔も、耳も、首も赤くしたわたしを、先程よりももっと優しい目で見下ろしてくる雀ちゃんが居て、恥ずかしさが増す。
彼女と目も合わせられないままでいると、名前を呼ばれて、ふわりと唇を重ねられた。
瞼を閉じる間もなく、その口付けは終えられて、頬や額、瞼にキスが落とされる。
――待って、……ほんとに、いつもの雀ちゃんと違う……っ。
心の中で叫ぶけれど、それは当然誰にも伝わらない。
目の前で、わたしの唇にもう一度軽く口付けている雀ちゃんにだって、わたしの軽いパニックは伝わることはない。
だって普段の彼女は、わたしがあんな類の事を言おうものなら、鋭い目をさらに鋭くして、襲い掛かってくる。
だけど、今日の雀ちゃんは襲い掛かるどころか、わたしが落ち着くのを待っているのか、もしくは、落ち着かせようとしているのか、優しいキスばかりしてくる。
拍子抜けしたと言えばそう言えなくもない。
一応、この後絶対ローター使われるんだ。と腹を括って、言った部分はあるので、肩透かしと言えばそうだ。
だけど、逆にこうして優しくされると、「だめ」と制止の言葉をかけた自分がなんだかいけない事をしてしまったように思えてならない。
だめと言わずに、待ってと言えば良かった、とか。
今からでも、「だめ」を撤回できないだろうか、とか。
じわじわと腹の底から、後悔が押し寄せてくる。
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雀ちゃんのキスがゆっくりと解かれて、合わせるように瞼を開ける。
彼女がキスをゆったりといくつも降らせていてくれたおかげで、目を見て話す余裕は出来た。
だけど……。
余裕は出来たけれど、なんと言おう。
やっぱりさっきの「だめ」はナシで。だなんて軽すぎる。
だったら……。
雀ちゃんにもっと気持ち良くして欲しいな? とか? や、いやいや、ちょっと媚びすぎかしら……。
うーん……。
腕でも組んで首を傾げたいくらいだと思った瞬間。わたしの目の前で、くすりと雀ちゃんの瞳が弧を描いた。
「とっても悩んでいるところ、割り込んで申し訳ないんですけど」
「え、あ、悩んでなんか」
「ないですか?」
わたしの言葉を継いで問い掛ける彼女に、口を噤む。
その見透かした物言いの前では変に繕うのも無意味なことと察して。
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わたしの様子にまた小さくくすりとした雀ちゃんが、こちらに顔を寄せたので、迎えるように顎を軽くあげて、口付けを受けた。
ちゅう、と一度だけ啄んですぐに離れた彼女の口付けはやっぱり甘くて、先程の悩みが再燃する。
「電気、ちょっと暗くしますね」
「えっ」
額に唇を押し当てたあと、雀ちゃんは両腕で自分の身体をひょいと起こして、ヘッドボードのスイッチに片手をのばした。
すうぅぅとベッドの上の灯りが絞られて、そこそこの暗さになる。
ちなみに、ベッドよりも向こうのソファあたりの電気は煌々と灯っているので、雀ちゃんがわたしの上に覆いかぶさるように戻ってくると、彼女の表情は逆光になってよく見えなかった。
「アレ使うときに、愛羽さんの表情が見えてないと、気持ちいいのか、我慢してるのか分からないなと思って電気全開だったんですけど、よくよく考えたらそれって、愛羽さんのこと、信じてないのと同じになるのかなと思って。ごめんなさい、気付かなくて」
愛羽さんは我慢しないって言ってくれたのに。と続けて言った雀ちゃんの顔が、わからない。
目が慣れれば見えるのかと思って静かに見上げていたのだけど、一向にその気配はない。その上、雀ちゃんはあんな優しい事を言って、わたしの額に口付ける。
そんな優しい彼女が、どんな顔をしてあの台詞を言ったのか、わたしは見逃したことを「だめ」と言った事以上に、後悔した。
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