隣恋Ⅲ~のたり~ 55話


※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたり 55 ~

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 可愛い。そんな声が聞こえたと思ったけれど、気のせいかもしれない。
 でも本当に雀ちゃんがそう言ったのかもしれない。

 だけどわたしは、それどころではなかった。

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「はっ、ん、ぅあっ…やぁ…っ」

 声が、止まらなかった。

 浴衣越しで、威力はそれなりに半減させられているとは思うのに、体感的には”強い”がしっくりくる程の快感を、その小さなローターひとつで与えられていた。

 振動はビリビリと伝わり、まるで抉るみたいな快感を押し付けられている気分だ。
 しかもそれに加えて、雀ちゃんがわたしの左腕を捕らえ、上半身の動きも封じているおかげで、快感を逃がす手立てが少ない。

 動かせる右手は伸ばした状態で、二人の身体の間のベッドのシーツを掴んでいるし、腰は極力身体を離そうとしてみているのだけど、やはりそれだけではどうにもならない程の快感が押し寄せる。

 胸の尖りはローターの刺激で、ぷっくりと立ち上がっているのだろう。雀ちゃんが押し当てながら上下に擦るそれがたまに引っ掛かる。

「や、あっ…すず、めちゃ……っ」
「うん…?」

 止めて、と言いたいのに、嬌声ばかりが口から零れて、言いたいことも言えない。
 それなのに彼女は、わたしの顔を見下ろしつつ、手元のローターを感覚だけでくりくりと押し当ててくる。

 顔を見ているのなら、わたしがどれだけ感じてしまっているのか、分かっているだろうに。
 身悶えするわたしを見つめたまま、一向にそのローターを離してくれようとも、スイッチを切ってくれようともしない。

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「ま、……て……んぁ、ぁぁっ」

 辛うじて口にした制止の言葉は途切れるし、その後に零れた嬌声はあられもなく、制止の言葉を掻き消す程だった。
 だけど、なんとか、雀ちゃんには届いたようで、ようやく、彼女は、ローターをわたしの胸から離してくれた。

 短距離走を全速力で駆けたあとのように荒く速い呼吸を繰り返すわたしを見下ろして、雀ちゃんはぽそりと言った。

「やば、これ……」

 同感。

 息を整えているせいで、同意を述べる言葉は出せないのだけれど、思考では同意した。
 やばいどころじゃない。ほんとに。

 ローターのスイッチを切ったし、身体から離した今でも、胸がビリビリじんじんと痺れるような余韻を感じている。
 息を落ち着けている今も、気を抜いたら声が混じってしまいそうなくらいだ。

 やばいどころじゃない、ほんとうに。

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「んくっ」

 口呼吸し過ぎてカラカラになった喉に、僅かに溜まっていた唾液を流し込んだ。
 不覚にも声が漏れたけれど、そんな事で恥ずかしがっているようでは、このえっちは終わらせられないだろう。

 だって、わたしはまだ、胸を弄られただけだ。さらに言うなら、片側だけ。

「ねぇ、愛羽さん」
「ふ、あ?」

 いつの間にか閉じていた目を開ければ、雀ちゃんのやけに熱っぽい瞳に見つめられていた。

「先に、謝っておいて、いいですか」
「……」

 はぁ…っ、と熱っぽく吐息を零す雀ちゃんが、何を言わんとしているのか。なんとなく、想像はできて、わたしは半眼で彼女を睨んだ。

「処女なのに?」
「うっ、え…と、出来るだけ尽くしますから」
「優しくしてねって言ったのに?」
「が、がんばれるだけがんばりますから」
「今にも頑張れなくなりそうなカオして?」
「う、う……」

 言い負かされて何も言えなくなった雀ちゃんが、バツが悪そうにわたしから視線を逸らした。

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 ――まったく、もう。

 彼女が何を先に謝っておいていいかと尋ねたかと言えば、多分「優しく出来ない」とか「夢中になりそう」とか「愛羽さんの事泣かせちゃうかも」とか、まぁそんなような所だろう。

 だけどわたしは先手を打って、先に謝らせることを許さず、彼女を言い負かした。
 だって、あんな凶器を使うのだから、簡単に我を失ってもらっては困る。

「……わかった。こうしましょう?」

 しゅんと耳を垂れた犬みたいに大人しくなった雀ちゃんが可愛くてつい、妥協案を提示するわたしも、随分甘い。
 自分で自分の首を絞める結果になるというのに。

「継続使用は1分。そのあとはインターバルをちょっと置く事。これでどう?」

 わたしの提案に、雀ちゃんは、目の前におやつの骨ガムを見せられた犬のようなカオになった。

 ――ほんと、可愛いんだから。

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