隣恋Ⅲ~のたり~ 41話


※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたり 41 ~

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「すみません。愛羽さんが可愛いすぎてトンデマシタ」

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「と、とんで?」
「ええ。なんていうか、夢中になるっていうか、我を失うっていうか、わかります……?」
「うーんと、なんとなく」

 確かに、我を失った状態だったのだと説明されれば、納得できる感じはあった。
 だって「やばい」としか言わなくなって、首に文字道理齧りついてくるんだもの。

「愛羽さんにもっとしてとか言われたら、だぶん誰でもとびます」
「えっと……じゃあ……言わない方がいい?」

 どういう原理かは謎だけど、わたしの言葉が引き金になったのなら、控えた方が良いのだろうか?
 なんだかあんなふうに、まだ始まったばかりなのに我を失うというのは、こちらとしてもびっくりする。
 雀ちゃん自身も自分がそうなったことに少し驚いているようだし、回避するためにはあまり、積極的に思ったことを口にしない方がいいのかもしれない。

 そう考え始めたわたしに、雀ちゃんは、閉じた口をむず…と動かしてから、首を振った。

「いや……言って欲しいです」

 だってすごくかわいいんですよ? と雀ちゃんは目尻を下げた。
 その対象がわたしなのに、こんなことを言うのもなんだけど……その……雀ちゃんの状態を言い表すならば「メロメロ」が一番しっくりくる。

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 なんでこんな可愛いんだ……とか独り言を漏らし始めた雀ちゃんに、すこし笑う。
 だって、なんだか、見てて、「わたしの事、好きなんだなぁ……」と分かるくらいに、デレデレしているんだもの。

 ――まぁ……リフレッシュ休暇だし? 羽目、外してもいい、よね?

 あの暴走状態になった雀ちゃんの攻めは、想像するに、大変な事が待っているだろうけれど、まぁ、いっか、と思える。
 わたしは彼女のものだし、わたしの全部をあげたいと思ったし、さらに言えば、あからさまなくらいデレデレしてくれる恋人を見て、女として嬉しいし。

 夢中になってわたしを求めてくれる彼女の熱に溶かされるのも、いいだろう。

 わたしは雀ちゃんの額から手を退けて、頬にあてていた手で、ツンツンと上気したそこをつついた。
 可愛いすぎてたまらん、とかなんとかぶつぶつ言っていた雀ちゃんの目が、はっとしたようにこちらに向いたとき、若干、甘めの声で告げた。

「キスマーク、まだ付けてもらってないんだけど?」

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 ぐらぁ…っ、と瞳の奥の奥から溶け出してきたのは炎。
 視線をあわせていたわたしはその炎の出現をまざまざと見せつけられて、思わず、たじろいだ。

 ――その、目っていつも指挿れた後くらいの目付きじゃないの……っ!?

 行為の後半くらいから見せる目を、どうして今、まだ、脱いでもない段階でみせるのか。もちろん今、わたしが焚き付けたからなんだろうけれど、焦る。

 もしかして自分は大変な事をしてしまったのではないか、と。

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 しかし今さら慌てても仕方ない。もうどうしようもないのだ。
 雀ちゃんはわたしの首筋に顔を埋めたし、何故なのか、どうしてなのか、わたしの両手が、彼女の両手にそれぞれ掴まれて、ベッドに押さえつけられた。

 両手の動きを封じられ、弱点に唇を触れさせられ、わたしはゴクリと喉を鳴らす。

 その緊張の様に、ふっと笑みを零した雀ちゃんが、首の中間あたりにくっつけていた唇をそのまま、スススとおろして、鎖骨に辿り着く。
 左へ、右へ、と鎖骨を唇が往復するスピードは、明らかに、焦らす事を目的とした速さで、時折、薄く開いた唇から吐きかけられる息が、熱い。

 それ以上に熱い胸。
 切ないみたいに苦しくなる喉元。

 雰囲気ごと、全部ひっくるめて持っていく空気作りが出来る雀ちゃんの特性は、凶器だ。
 舐められてもいないのに、呼吸が浅く、速くなってしまう。

「す、ずめ、ちゃん」
「んぅ?」

 普段よりも低く響く声が、鼓膜を抜けて脳を揺さぶる。
 ぎゅっと目を閉じたわたしは、押さえつけられた腕にかるく力を込めて、持ち上げる素振りをした。

「抱き着きたいから、はなして……?」

 いつものわたしなら「手、放して」くらいしか言わない。だけど今は、何かに縋る事を最優先にしたくて、甘えた声で、強請るようにお願いをした。
 我を失った状態にさせたのは甘えた声でのおねだりだったはず。だからきっと腕を解放してもらえる。

 そうしたら、すぐに雀ちゃんの体に回して、浴衣を握るようにして抱き着こう。それでなんとか、与えられた快感を逃がして……。と計画を立てていたわたしの耳に届いた低い声は、砂糖菓子みたいに甘かった。

「だめ。キスマークつけ終わるまで、このまま」

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