※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 40 ~
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わたしの言葉に安心したのだろうか?
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雀ちゃんは再び、わたしの首に顔を埋めた。
「私も愛羽さんが大好きですよ」
「ぅ、ん」
ちゅ、と首に口付けられて声が一瞬だけ震える。
さらに細かに、位置を変えて、ちゅ、ちゅ、と配られてゆくキス。
まるでそのキスはこれから痣を作る場所の品定めをしているようにも思えて、体が震える。
「寒いですか?」
二人の体の上にかかる布団は腰あたりまでしか覆っていない。
わたしの震えを気に掛けてくれた雀ちゃんが、首元で囁く。
温かな呼気と、耳に近い声。その二つで余計、体が震えて、呼吸も荒くなってしまう中、わたしは首を振った。
「ちがうの……っ、気持ち、いいから……」
気持ちいいは我慢しないで口に出して貰えると助かる。雀ちゃんがそう言っていたことを思い出して、わたしは告げる。
「もっと、して……?」
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正直、恥ずかしい。
こんな素直に思ったことを口にするえっちは、したことがない。
誰との行為でだって、わたしは恥ずかしさが先行して、「こうして欲しい」「もっとこうがいい」など、そういう気持ちいいポイントを指定するのが非常に苦手だった。
流石に的外れな場合はそれとなく誘導はしたけれど、それなりに気持ちよければ、その快感を拾って、時にはイッたふりなんかもした。
そんなえっちを重ねてきたから、雀ちゃんとのえっちも最初のころは余所余所しい部分があったのだけど、いつの間にか矯正されて、ここまで素直になっていた。
これも、ひとえに、彼女からの影響をうけた、ということなのだろう。
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そんな影響を与えた雀ちゃんはというと、わたしの言葉を聞いた瞬間、「はぁっ」と熱く息を吐いた。
軽く喘いだわたしが再び首を竦めると、雀ちゃんはあがった肩にキスをして、静かに息を吸った。
「……やばい……」
「え……?」
溜め息混じりの言葉を聞き返す。とても便利な言葉だけど、「やばい」にはいろんなパターンや意味があって、わたしには何がやばいのか分からなかった。
「今、色仕掛けしてる訳じゃないですよね……?」
「しっ、してないわよもう……!」
する必要ないでしょっ、と続けて言うと、雀ちゃんは「そうですよねしてないですよね」と早口に納得して、また「やばい」と言う。
「私が言ったから、なんていうか、その、気持ちいいとかもっとしてとか、言葉にしてくれてるんですよね……?」
「そ、そうよ?」
一体何の確認だ。
もしかしたら何かいけない事でもあったのだろうか。
「ね、ねぇ……なんでそんなに聞くの? わたし何か」
ヒク、と首の肌が震えた。その肌が感知したのは、湿り気のある熱い呼気。これが肌に触れたということはその直後に。
がぶり、とまた噛まれた。
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「んっ、ン……!」
ほんの一瞬前にそれを察知したわたしは下唇を噛んで、痺れるような快感に耐えた。
硬質物が強く触れるこの感触。挟んで両側からぐぐと押し付けられた歯が、痛みではなく甘い快感と痺れを与えてくる。
絶妙な加減をされた咬合力に翻弄されるわたしは彼女の後ろ髪と背中の浴衣を乱すようにしがみつく。
「……ぁあ……やばい……」
「はっ、はぁっ……ん、は……っ」
絶対いまのは、不安とかじゃなくて昂ったから噛んだ……!
心の中で叫ぶわたしは、息を整える。
雀ちゃんはというと、語彙力の少ない若者みたいに、さっきから「やばい」を執拗に繰り返した。
唾を飲み込み、息を整え、彼女にしがみ付く腕から力を抜いて、わたしの首にキスを繰り返す雀ちゃんの頭をガシリと両側から掴んだ。
「雀ちゃん……!」
「え、い、え? なんで頭掴んでるんです?」
首に顔を埋めていた彼女を強制的に持ち上げ、表情が窺える位置まで誘導する。
そこでやっと「やばい」しか言わなくなった彼女の顔を見つめたのだけど、随分上気している。そして目がとろんとしていて、潤みきっているではないか。
「ど、どうしたの」
と一瞬焦るくらいには、色気たっぷりの彼女。
抱かれる側のはずのわたしよりも、なんだか婀娜に溢れている彼女の頬に手をあてると、やはり熱い。
雀ちゃんからすればきっと、わたしの手はひんやりと冷たく感じたことだろう。
その冷感に気を取り戻したのか、雀ちゃんの溶けた瞳に、少し冷静さが入り込んでくる。
「大丈夫?」
「あー……すみません。ちょっと、やばかったです」
またやばいって言った。
てことは多分まだ、頭がぼんやりしてるんだ。
わたしは頬にあてていた両手のうち、片手を外して彼女の額に押し当てた。
ヒンヤリして気持ちいいのか、目を閉じる雀ちゃんは深く息を吸って、瞼を押し上げた。
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