※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 38 ~
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「んっ……!?」
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唸るような声は食いしばった歯の隙間から漏れた。
言い方を変えるなら、”歯を食いしばっても、声が漏れてしまった”だ。
甘ったるく、チゥ、と音を残して未練がましくゆっくり唇を離した。その肌には赤色が鮮やかに咲いていて、わたしは無意識に口元へ笑みを浮かべる。
「……付けましたね…?」
「あら、駄目だった?」
駄目とは言わせないわよ? と言外に含むけれど、わたしを見下ろす瞳は「あーもうこんな見える所に付けちゃって」と不満げだ。
そんな顔も可愛いと見上げながらも、背中を抱き締めていた片腕を解いて、彼女の鼻をちょいと弾く。そしてその指で、わたしは自分の首筋を示して無言で重圧をかけてみせるのだ。
自分が付けたキスマークにちらりと視線を流した雀ちゃんが、喉の奥で唸る。が、すぐに気を取り直したみたいに、わたしの首元にたまった髪を手で梳くようにしながら避けて、なにやら首筋を露わにし始めた。
素直というか、解り易いというか。
キスマークを見える所に付けちゃだめ、という暗黙のルールが本日は解禁になっているのなら自分だってさらに付けてやるぞ、といそいそと準備をしているのだ。
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そんな彼女が可愛いくて、思わず、彼女の頭を撫でてしまう。
ただただ可愛いから手を伸ばしただけなのだけど、奇しくも、後頭部に手の平をあてる形になると、雀ちゃんは目の端に意地悪をちらつかせて笑う。
「早くしろってことですか?」
「ち、ちがうけど」
羞恥心でカッと頬を染めかけるけれど、それよりもいつもの調子に戻ってきてくれた彼女が嬉しくて、わたしは後頭部にあてた手で、彼女を引き寄せた。
首筋にうずまる雀ちゃんの意外そうな気配を感じつつも、吐息が肌を撫でた感覚に片目を閉じる。
深くゆっくりと息を吐いて、心を落ち着かせると、彼女の頭をそっと撫でた。
「いっぱい、つけていいよ? わたしは雀ちゃんのものだから、いっぱい、その印、ちょうだい……?」
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――あぁぁあ恥ずかしい……っ。こーゆーコト言うのって、言った後に恥ずかしくてたまらなくなるのよね……っ。
心の中で叫ぶ。
だけど、別に嘘を言ったわけでもなく、今は何故だか、わたしの全てを彼女にあげたいと思うのだ。
大好きで、愛しくてたまらないこのひとだけのものにして欲しくて、それを体に刻んで欲しい。
しかし。
「……雀ちゃん……?」
応答がない。
わたしが告げてから、何故か、息も止めている彼女は、ピクリとも動かない。
不安になって、わたしの首筋に顔を埋めている雀ちゃんを窺おうと顎を引きながら、体をずらしかけたとき。
「駄目」
と肩を掴まれた。
その後すぐに、「行かないで」と言った雀ちゃんの呼気が異様な程に熱く首筋にかかる。
数秒間息を止めていた彼女の呼吸はすこしだけ強い。だからこそ余計、首筋にあたる熱は大きく、わたしの弱点である首筋を撫で回す。
深呼吸したって何をしたって、きっと、この鳥肌は止められなかったと思う。
性感帯への刺激をまともに受けたわたしは、首、項、肩、腕、胸元と彼女が呼気を吹きかけた首を中心として多くの部位の肌をプツプツと粟立てた。
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けれど雀ちゃんはわたしの鳥肌に気付いているのかいないのか。顔の位置はそのままに、まさかの深呼吸をし始めるのだ。
一度。
二度。
三度。
「ひ、ぁっ……」
腰が、砕けそうになる。
声なんて、我慢できない。
息の震えだって、上手くコントロールできなくて、極寒の地に防寒具なしで立たされたような人の呼吸みたいに、ふるえた。
肩を押さえられているのに、動けないことは確定しているのに、残酷なまでに熱風の愛撫を止めてくれない彼女から遠ざかりたくて、首をねじり、体ごと横へ力をこめた。
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