隣恋Ⅲ~のたり~ 37話


※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたり 37 ~

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「え……」

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 まさかそんな返しをされると思っていなかったのだろう。雀ちゃんは少し驚いたように声を漏らした。

「社会人の大人のくせに年甲斐もなく色仕掛けとかしちゃう女に、どうして前途有望な若者で、素直で優しくて、他に類を見ないくらい性格いい子が惚れちゃってるのか、ね」

 謎。と最後に付け加えてから、もう一度、唇を重ねた。

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 キスを解いて、至近距離で見つめ合うわたし達はくすくすと笑った。
 この光景を誰かに見せるつもりはさらさらないんだけど、見られたとしたらきっと「バカップル」と言われるだろう。

 自分でもそう思うくらいだから、多分、他人から見たら一層強く思われるだろう。
 今までお付き合いはしてきたけれど、こんなに甘い空間を体験した事はあっただろうか…?

 記憶に残っている限り、過去の睦言を探してみても、それは見当たらない。
 なんというか……雀ちゃんとだからこそ、この空間は作りあげられたのだと思う。

 彼女の素直さに釣られてと言えば少し言葉が乱暴かもしれない。
 だけど、雀ちゃんがこんなふうに素直に言ってくれるから、わたしの中の数少ない素直さが発揮されるのだ。

 わたしは自ら進んでこんな事を言うタイプではないのだから、確実に、彼女が影響を及ぼしている。

 ――そういえば雀ちゃんと付き合うようになってから、まーに優しい顔するようになったって言われたことあるわね……。

 うん、確実に、雀ちゃんが良い影響を及ぼしてくれているのだ。

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 わたしは雀ちゃんのそういう所が好きだし、他に例を挙げながら好きな所を言ってみろと言われたなら、きっと随分と長くお喋りが出来ると思う。

 雀ちゃんにしたって、大人の玩具を使う使わないという話をして、何か、思う所があったのだろう。
 琴線に触れたのだが、それを事細かに説明をするのもどうか、と考えた結果「どうして私はこんなに愛羽さんが好きなんでしょうね?」の台詞に繋がったのではないかと思う。

「きっとわたしの方が雀ちゃんの事好きよ?」
「いやいや私の方が愛羽さんを好きな気持ちは大きいですって」

 キスを交わしながらこんなことを言い合うバカップルなのだけど、他人が砂を吐きそうな程甘く馬鹿な会話でも、それで当人達がこの上ない幸福感に浸って居られるのだから、別段問題はないだろう。

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 わたしは彼女の頬を撫でて、するっと手を下ろし首筋に触れた。汗ばんだそこに血管の脈動を感じて、なんだかそれさえも愛おしくなる。

「雀ちゃん。ぎゅって抱き締めて?」

 背に回した腕で引き寄せながらのお願いを快く引き受けて、彼女はわたしに覆いかぶさった。相変わらず、軽く体を浮かせている気遣いは継続中。

 そんな優しさに軽く微笑みつつ、首筋に顔を埋め、彼女の背中を両手で抱き締める。このぬくもりを感じる度、ほうと息をつきたくなる安心感に包まれる。
 わたしの中ではもう、このひとの腕の中が、”安心できる場所”として認定されているらしかった。

「好きよ」

 わたしは囁きつつ、その首筋に唇を押し当てた。
 唇を僅かに押し返すトクトクという脈動は、先程手で触れたものと同じだ。

 ――これすら愛しいって想えたのは初めて。

 よく色んなことで嫉妬している雀ちゃんだけど、わたしにとっての初めてを意外と奪っていることを気付いているのだろうか?

 きっと、気付いてないわね。と脳内で答えを出して、脈打つその肌を強く吸った。

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