※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 28 ~
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――1回で止めるつもりはないんだけど。
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ゆっくり顔を上げながら脳内で呟く。
視界に入った雀ちゃんの顔は赤く、何か言いたげな表情。
多分彼女の頭の中では、「この人は酔ってるんだから」とか「さっきのぼせそうなくらいお湯に浸かっていたんだから」とか「倒れそうにふらついたんだから」とか、自分にブレーキをかける理由をこれでもかというくらに挙げていることだろう。
だけどその反面、わたしの手が彼女の頬へ触れると、嬉しそうに、瞳の奥に宿った火種を隠しつつ、目を細めるのだ。
葛藤に苦しむ恋人を可哀想かな……、と思わないでもない。
だけど色仕掛けを仕掛けた始めた今、ここで止めたら、雀ちゃんはわたしの酔いを冷ます時間中ずっと、悶々として過ごすことになる。
――ここは心を鬼にして……。
頬にあてた手でするりと撫で、肩に手をかけた。
その手を軽く引き寄せるように肘を引くと、喉を一度鳴らした雀ちゃんが、こちらに向けてゆっくりと顔を寄せた。
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触れ合った唇は、もうどちらのものが冷たいかは分からないくらいに、温度差はなくなっていた。
相変わらず柔らかい唇は、触れ合わせるだけでは物足りなさを覚える程に、わたしを甘く刺激する。
ほんの1秒か2秒じっと動かず触れ合わせているだけなのに、わたしが辛抱できず、啄むために唇を開いた。その瞬間。
「もっ、もういいでしょう…!?」
もの凄い勢いで離れた彼女に呆気にとられ、薄く開いた唇もそのままに、わたしは雀ちゃんを見つめた。
そのポカンとした様子に、焦ったのか、取り繕うみたいに早口にまくしたてる雀ちゃん。
「ほ、ほら、一回、したし、ね?」
ね? じゃない。ね? じゃ。
「あんなのキスじゃない」
肩にかけていた手で彼女の浴衣をぎゅっと捕まえて、こちらから身を寄せる。
いい゛…!? と顔を引き攣らせる雀ちゃんの反応は、明らかにこれ以上のキスを拒否するオーラが出ていて、彼女の理性を崩壊させるべく色仕掛けをしているという状況を一瞬だけ忘れてしまうくらいに、……正直、むかついた。
なんで恋人とのキスを嫌がるのよ。
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普段なら喜んでキスに応じる彼女が、それを拒否する理由なんて、わたしが体調不良だから、というもの以外思い当たらない。
冷静になればそんなことはすぐ理解できるし、それだけ優しい人なんだと胸がじんとする。
けれど、わたしは……もしかすると少し、酔っているのかもしれない。
「キス、嫌なの?」
と彼女に詰め寄った。
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「いやいやいや嫌なんかじゃないですけど」
「じゃあなんであんな素っ気無いの。嫌なんでしょ」
「嫌じゃないですってば!」
「だったらちゃんとして」
ん。と目を閉じて、拳一つ分くらいの距離まで顔を寄せて、唇を晒す。
「そ…れとこれとは話が別で……」
「ん!」
ぶつぶつと言い訳を並べようとする彼女の浴衣を引く。
――あれ? これって”色仕掛け”ではないわね……? 駄々っ子みたいに迫るだなんて、色気の欠片もない状況じゃない……?
目を閉じれば少し取り戻せた冷静さ。
自分のしていることと雀ちゃんのたじろぐ気配を総合してよくよく考えると、あまり良い状況ではない。
――酔ってないって言ったけど、実は意外とアルコール回ってたりして……。
実際、鏡前でふらついたのは嘘でも芝居でもなんでもない。本当にフラッときたのだ。
もしやもしや、と良くない考えが湧いてくるのだけど、その思考を振り切って、気付かなかった事にする。
だって、雀ちゃんの唇が、おずおずとわたしのそれに重なったのだから。
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