※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 24 ~
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わたしの手を掴んでいた手が、そっと、離れた。
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下からわたしの手を掬い上げるように掴んでいた雀ちゃんの手が離れて、そのまま、ゆっくりと頬へやってくる。
親指の腹が優しく頬を撫でて、そのまま、顎のラインを伝っていく。
鳥肌が立ちそうで立たない絶妙な加減の指先がわたしの頤に添えられるけれど、元々、雀ちゃんの瞳に見惚れているわたしの顔はいつでもキスが出来る角度。
だからきっと、これは、彼女なりの合図。
ふらついた後に、こういう事するのもちょっと躊躇っちゃってるんだろうな。と彼女の心中を想像して、内心、苦笑してしまう。
嫌じゃない。
むしろ、して欲しい。
それを伝えたくて、わたしはそっと、瞼を閉じた。
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重ねられた唇は、温かい。
きっと、今度は、チューハイを飲んでいたわたしの唇の方が冷たいんだろう。
小さく何度も、啄んでくる雀ちゃんのキスに応じながら、寂しくなった手を彼女の背中へと回す。
指先を肩甲骨あたりに乗せるようにして添えた手で、彼女の浴衣をきゅっと握れば、啄む間に、雀ちゃんが短く「は…っ」と吐息を漏らした。
随分と熱を孕んだその吐息に、こちらまであてられて、ぞく……とする。
「す、ずめ、ちゃん」
声を発し始めても譲ってくれなかった彼女に、途切れさせられた名前を言い終えた頃。やっと、彼女はわたしの唇を啄むのをやめてくれた。
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こんな事をした後言うのもアレなんですけど。と前置きをした彼女がわたしの頬に手のひらを添えるようにあてた。
「体、大丈夫ですか?」
「ぁ、うん。ちょっとお酒が回り過ぎただけみたい。ごめんね? 心配かけて」
あと、ありがとう、助けてくれて。と言うよりも前に、雀ちゃんの柳眉がクイと片方持ち上がった。
「お酒?」
「え、わっ」
雀ちゃんが鏡に向かって立っている状態で、わたしの背後に洗面スペースがある。ちょうど、歯ブラシの入ったコップの横あたりに缶チューハイを置いてあったんだけど、雀ちゃんはそれが気になったみたい。
わたしが倒れないようにぐいと強めに抱き寄せながらも、背後にある缶に手を伸ばして、持ち上げる。
その間、彼女の腕に抱えられたわたしは成す術もなく、ぎゅっと密着を強要されて、柄にもなく、照れた。
もちろん普段ならそんなことないんだろうけれど、数分前に抱き締められて濡れた女の体は随分と正直なのだ。
「てっきり桃のジュース飲んでるんだと思ったら、お酒飲んでたんですか」
「う、うん」
「なんだ。びっくりした。時間が経ってからのぼせたのかとか、貧血起こしたのかとか心配したんですよ? 一瞬」
お酒かぁ。と安心した様子で呟いた雀ちゃんは、わたしを抱き締めたまま缶に口をつけた。ほとんど残っていないそれをぐびぐびと飲み干して、コップの横に缶を置いた。
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「あ、わたしのお酒のんだ」
「もう愛羽さんは飲んだらだめです。飲みたかったら、夜ごはんの時にしてください」
言うが早く、彼女は軽く屈むと、わたしの背中と膝裏に腕を回してひょいと抱き上げた。
「ぅひゃぁっ!? ちょ、ちょっと!?」
「暴れたらおっこちますよ?」
まさか抱き上げられるなんで思っていないわたしは悲鳴を上げるけれど、そんなのお構いなしに、雀ちゃんは真っ直ぐベッドに向かう。
畳を歩くしゅっしゅっという足音が、いやに大きく聞こえる中で、自分の顔にどんどん熱が集中していくのが感じ取れる。
――ちょっ……ちょっと待って。今そういう格好良い事されたら……っ。
ばっくん、ばっくん、と心音の一回一回が大きい。
彼女の歩行に合わせて揺れる身体が、どんどん熱くなってきているのも、首を竦めたくなるようなむず痒い肌の粟立ちがさざ波みたいに寄せてくるのも、堪えようにも自分ではコントロールが利かない。
「下ろしますよ?」
顔も上げられずに俯いていたわたしの頭上から、落ち着いた声が降ってきた。
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