※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 22 ~
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「かわいくない」
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むすりとして見せて、雀ちゃんの背中をドライヤーのある鏡前へと押し出した。
微かに笑い声を残した彼女は素直に鏡前の椅子に腰掛けると、ドライヤーを手にとった。
「まったくもう」
すぐにえっちな事しようとするんだから。
ここに来て雀ちゃんは常にそういう機会をうかがっているのだろうか、と思うくらいに、やらしい目を節々に見せるようになった。
まぁ…ラブホテルなんていう名前のこの建物自体がやらしいんだけど、それにしたって、ふいにキスをしただけで、夜を思い出しそうな手つきをされたのでは、体が疼いて仕方ない。
こっちだって、さっきまでドキドキしながら大人の玩具前に居たのだから、”そういう気分”がすこしはあるのだ。焚き付けないで頂きたい。
ふんす、と鼻から息を吐いて、わたしは改めてドリンクの販売機を眺めた。
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ボタンを押して取り出したのは、缶チューハイ。
桃味に惹かれたのもあるし、リフレッシュ休暇くらいお昼からお酒飲んでも構わないだろうと、自分を甘やかした結果だ。
ソファへ向かって、ぽすんと腰掛ける。
肩に羽織るようかけていたバスタオルで髪をタオルドライしてから、チューハイのプルタブを開けた。
香料と人工甘味料の味が舌の上に広がる。
やっぱりバーで飲むお酒の方が断然美味しいと思ってしまうくらいには、酔やシャムで、わたしの舌は肥えてしまったようだ。
貧乏舌には貧乏舌なりの良さがあったのに、育ってしまった自分の感性は、こういう安いものでは物足りなさを覚えてしまうようになったか……。
自身の成長を嬉しくも悲しく感じて、ほぅと息を吐く。
お湯で火照った体の中心を、桃のお酒がサラリと冷やしてゆく。やっぱり暑いときは体の中から冷やすのが一番だった。
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ぼんやりとチューハイの缶を傾けていると、ずっと聞こえていたドライヤーの音がブォン……と切れた。
どうやら雀ちゃんが髪を乾かし終えたらしい。
「愛羽さん。お待たせしました」
とこちらに顔をのぞかせた彼女が、手招きをする。
チューハイを置く場所もなかったので持ったままそちらへ向かうと、雀ちゃんが椅子へ腰掛けるように促した。その片手には、ドライヤー。
「乾かしてあげますから、それ飲んでていいですよ」
「え、いいのに。自分でするわよ?」
「いーからいーから」
愛羽さんの髪触るの、好きなんですよね。と笑顔を見せられたら、その優しさに甘えるしかなくなってしまうじゃない。
確か先日も、髪を乾かしてもらった記憶がある。あれは徹夜から接待と仕事のフルコースをこなした日だったか。
わたしがタオルドライをした髪の毛にまず、櫛を通して整えている手つきはなんだか慣れている。
大きな鏡が、なんだか美容院に来たような雰囲気を醸し出していた。
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「熱かったら言ってくださいね」
「はーい。おねがいします」
鏡越しに視線を合わせて笑った彼女がドライヤーのスイッチを入れた。
柔らかくあてられる温風と、髪を掬う彼女の手が気持ちいい。
わたしは彼女に甘えさせてもらいながら、チューハイをちびりちびりと口へ運ぶ。
――もし、雀ちゃんが美容師さんだったら……絶対指名、多く入りそう。
彼女の私服のセンスは特別オシャレさんっていう訳でもないけれど、ショップ店員さんにおすすめされたものを主に買うらしくて、流行り物を取り入れたさり気ないオシャレをする。
そんな彼女が美容師さんだったら、きっともっとお洒落にお金をかけて気も遣うだろう。
するとこの容姿は今以上に引き立って、ひとの目を引くようになる。
――そしたら絶対モテる。確実、モテる。
この性格の良さもあって、余計、モテてしまう。
それは困る。わたしの雀ちゃんだもの。
ただでさえ、バーテンダーという憧れを集めやすいバイトに就いていて密かに心配しているんだから。
恋人馬鹿な思考を繰り広げながら、わたしは酒の肴に鏡越しの恋人を眺めて、缶を口へと運ぶのだった。
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