※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 21 ~
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コップの中に挿し込んだ歯ブラシの柄が、カラン、と涼しげな音を立てた。
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濡れた口元を拭って、テレビ前へ進む。
意を決してそこの扉の前に、しゃがみこんだ。左扉が大人の玩具。右扉がドリンク。
深呼吸して、左扉の取っ手に、手を伸ばした瞬間、わたしの左斜め前で、音がした。
心臓が口から飛び出るんじゃないかと思うくらい驚いて、わたしの肩がビクウゥッ! と跳ねた。
咄嗟に、左から右扉の取っ手にターゲットを変えて、開く。
商品もろくに確認せずに、ぷち、と一番左下の枠のボタンを押して何かを買った。
引っ張り出したそれは銀色をベースにして黒色の文字で商品名の書かれた缶。
「? ビールなんて持って何してるんです?」
飲めないのに。と部屋に浴衣姿で入ってきた雀ちゃんが立ち止まってわたしを見下ろす。
「ハイ!」
「ええ?」
ぐっと手を伸ばして彼女に押し付けるように渡す。戸惑うように受け取った雀ちゃんに出来るだけにっこり自然に見えるように笑ってみせる。
「やっぱりお風呂上がりはビールかと思って……!」
「あーまぁ、帰りは明日なんで飲んでもいいと思うんですけど。こんな昼間っからいいんですか?」
コクコクと頷いて、促す。
内心、大人の玩具の販売機を確認しようとしていた事を見抜かれていないか、ドキドキだったんだけど、嬉しそうにビールのプルタブをカシュ、と開ける雀ちゃんの様子を見る限り、わたしの行動は気付かれていないみたいだった。
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ごく、ごく、ごくとさも美味しそうに喉を鳴らして缶を呷る雀ちゃんを見上げて、気付かれなかったことにほっと息をつく。
まさかこのタイミングで彼女が戻ってくると思わなかった。
「愛羽さんも飲みます?」
ん。と差し出されたその缶を咄嗟に受け取る。いつもなら、苦いからいらないと断るところなんだけど、まだちょっと平常心を取り戻せていないみたいだ。
3口、ちまちまと喉を鳴らすと、やはり、苦い。
缶から口を離して、「んぅぇ」と笑っている彼女に缶を返した。
「まだ飲み屋さんの生の方がおいしい……」
「ビールサーバーの方が断然うまいですもんねぇ」
と同調しつつも、彼女は美味しそうに残りのビールを飲み干した。
「ごちそうさまでした」
「はや……」
「いやぁ、喉乾いてたもんで助かりました」
あんな一気に飲んで酔っ払わないんだろうか?
まぁ食事をとってそんなに時間は経っていないから、胃が空ではないので大丈夫だろうけど。
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空になった缶をテレビの横に置いて、雀ちゃんはわたしの頭に手を乗せた。
「まだ髪乾かしてないじゃないですか」
「ん? あ、うん。……ちょっと喉乾いちゃって。雀ちゃんの方が乾くの早いだろうから、先にドライヤー使って?」
まさか、大人の玩具買ったかどうか確認しに来てて髪乾かしてませんでしたとは言えない。
「風邪引きません? 大丈夫?」
「引かないよ、このくらいで。心配屋」
頭に置かれた手を握って、立ち上がり、優しくて心配性な恋人にキスをする。
当然のように腰に手を回して抱き締めてくれるので、ちう、ちゅぅ、と何度か唇を啄んでみる。
「つめたいね、くち」
「ビール飲みましたから」
ひんやりとした唇の理由を告げる雀ちゃんが甘い表情で、わたしを抱く腕に力を込めた。
顔を軽く傾けた彼女が再び唇を重ねてきて、今度は舌を絡めたいのだと、合図される。ちろ、と舐められた唇を薄く開けば、唇同様、ヒンヤリとしたそれが入り込んでくる。
「…ん…」
その冷たさが優しくて、思わず声が漏れる。
鼻から抜くような声はどうやら雀ちゃんを煽ってしまったようで、彼女は腰に回していた手を、まさぐるような動きに変えて、背中や腰を撫でてくる。
「っ、こら……」
慌てて、キスを解いて、怪しい動きの手を捕まえると、彼女は悪びれるふうもなく、
「だって愛羽さんが可愛いから」
と笑顔を見せた。
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