※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 18 ~
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「湯加減はどうですか?」
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頭を岩に預けて、青空を流れる雲をぼーっと眺めていたら、耳のすぐ傍で雀ちゃんの声がした。
「んー。最高」
斜め後ろを見上げつつ言えば、雀ちゃんがお湯に足先を差し込むところだった。
――脚、長い。雀ちゃんに限らず、最近の子達って基本的に脚長いのよね。
「おじゃましまーす」
露天風呂にちょっとはしゃいでいるのか。弾んだ声で雀ちゃんが言う。
水面が揺れて、その侵入者を温かく包み込む様子を眺めていると、若い肌にお湯が弾かれていた。
――わたしだってまだ弾くし……!
このお風呂に効能なんてひとつもないけれど、お湯を肌に擦り込むみたいに腕を撫でてみる。でも、きっと、無意味だ。
「あー……気持ちいいですねぇ」
両手両足をお湯の中でぐぐぐと伸ばして雀ちゃんが、たまらないというようにぎゅっと目を閉じた。
まるで猫の伸びのような仕草にちょっと笑って、濡れた髪をくしゃくしゃと撫でた。
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細いその髪はわたしの指にいつもより絡みついて、指通りはよくない。
だけど髪をかき上げれば、オールバックの出来上がりで、いつもと違う髪型に少しだけドキドキする。
思わず、ぱらりと束で落ちてくる髪をかき上げる手を止めて、じっと見てしまう。
「ん? どうかしました?」
髪をされるがままに目を閉じていた雀ちゃんが、ちらっと片眼を開ける。まるでウィンクのようなその仕草によけいドキドキして、わたしは顔に熱が集まるのを感じた。
「ん、や……雀ちゃんって、男装とか似合いそうだなと思って」
「あー男物の服着て?」
「そうそう。そういう喫茶店とか流行った時あったじゃない?」
燕尾服やタキシードを着た女性が、恰好良くキメて、接客してくれる喫茶店。
面白そうで行ってみたいなと思ったものの、わたしの家も会社も、近くにそういう特殊なお店はなくて断念したのだった。
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「あ、そうか。愛羽さんはまだ来た事ないんだ」
「? どこに?」
独り言のような呟きに問い返すと、雀ちゃんはちょっと笑って「シャムですよ」と言う。
だけど、シャムには結構な頻度で通っているんだけど。
「3月3日は女装。4月4日は逆転。5月5日は男装。ていう設定でシャムはイベントやってますよ」
「え、なにそれ知らない! 行きたい!」
咄嗟に言ったものの、首を傾げる。
「逆転ってなに?」
「私や店長は男装。太郎君とかは女装するんです。自分の性と逆転する訳ですね」
「あ、なるほどね。面白そう。来年は必ず行くから」
お待ちしてます。と雀ちゃんがにこやかに表情を和ませるけれど、わたしの心中はその逆だ。
「雀ちゃんの男装とか絶対恰好良いだろうなぁ。見たかった。……見た人羨ましい」
「そんなイイモンじゃないですって」
顔を横に振って苦笑する雀ちゃんだけど、絶対恰好良いに決まってる。
「女装は? なんかコスチューム着たの?」
「あー……メイド服ですね」
「かわいい~! 見たかった!」
「いや……全然似合わなくて本当イイモンじゃないですから……」
「それでも見たかった」
うえぇぇ? みたいな顔する雀ちゃん。
うーん、恋人として、どんな服装でも見てみたいと思うのが普通だと思うんだけど。似合っていたら見てみたいし、例え、似合ってなくても、見てみたい。
そしてあわよくば、写真を撮りたい。
最悪、仕事を休んでもシャムに行きたいと思うくらいは、女装デーも逆転デーも男装デーも、彼女の雄姿をこの目に焼き付けたいのだ。
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