隣恋Ⅲ~のたり~ 16話


※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
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※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたり 16 ~

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 彼女の返答を耳にして理解した瞬間、どっく! と一際大きく、心臓が跳ねた。

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「使って、みたいの?」
「あ、いや、その、嫌でなければ、ですから。絶対使いたい訳じゃ、ないですからね?」

 念を押す彼女の言葉は優しく、きっと、わたしが嫌がるような事はしたくない。と言いたいのだろう。
 でも、雀ちゃん自身の興味はある、と。

「……。あとで使って、みる?」

 言ってから、ぼっと、羞恥に赤く染まる頬。体も一気に熱くなるし、もちろん、顔も、耳も、とてつもなく、熱かった。

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「ぃ、いいんですか……?」

 信じられない、とでも言いたげな声が確認してくる。
 それは「本当に大丈夫なんですか? 玩具ですよ? 嫌ならしなくていいんですからね?」という心配からの確認なんだろうけれど……。

 そんなに改めて尋ねられると、恥ずかしさが膨らむ。

「ぁ、んまり何度も聞かないでよ……恥ずかしいんだから……」

 隣にしゃがみ込んでいる雀ちゃんに肩を軽くぶつけて「ばか」と言って、わたしは立ち上がった。
 かき集めるようにテレビの横に置いてあったボトルを抱きかかえて、

「す、雀ちゃんが使いたいならわたしは構わないからっ」

 と早口にまくしたてて、「先に行ってる…!」と言い捨て、二つのドアを潜り抜け、露天風呂のある外へと掛け出た。
 俊敏な動きはやはり、だるい腰や足にくるのだけど、あれ以上、雀ちゃんの隣に居たら顔から火を噴いてしまいそうだったんだもの。

 閉まった扉の向こうにちらっと視線をやって、大きく息を吐く。

「顔、あつ……」

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 3つのボトルを露天風呂より奥にある洗い場までもっていってから、洗い場の端に意図的に置かれた一抱えもあるような大きな石に目をやる。
 まるでレーザーカッターでスパッと切り落とされたみたいに上面がまっ平なその岩はきっと、ここに脱いだ服を置けと言っているような雰囲気。

 後ろを振り返れば、まだ雀ちゃんの姿はない。

 ――来る前に、体とか洗っちゃお。

 できれば汗もかいているし、髪も洗いたい。

 身に纏っているものをすべて脱ぎ捨てて、まっ平の石の端に軽く畳んで置く。もちろん、ショーツは浴衣の間に挟んで、見えないようにしておいた。

 と、そこで気付く。これは、昨日穿いていた下着。雀ちゃんとのえっちで汗もその他も浸み込んだやつ。昨晩とりあえずと思って、ベッドの中で身につけた物そのままだ。
 替えの下着は鞄の中だ。

 そしてもうひとつ。バスタオルを持ってきてない。

 ここはお風呂が、内風呂と外風呂とある為か、元々バスタオルもフェイスタオルも4つずつあった。ここが一番高い部屋だからなのか、他の部屋でもそうなのかは不明だけど、タオル類が多いと助かる。

 やっぱりどうしてもお風呂に入る回数は増えるし、その度に新しいタオルを使いたいと思うのが乙女心。
 わたしたちのように連泊するお客はほぼ居ないだろうけれど、一泊であってもあれだけタオルが置いてあれば、夜と翌朝入浴できるので安心だ。

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 ――雀ちゃんがせめて、タオル持って来てくれたら助かるんだけど、さすがにあの後じゃそこまで気が回らないか。

 あんな大人の玩具どうこうの話の後だもんね。
 彼女が来たら、服を脱ぐ前にお願いして取ってきてもらおう。

 シャワーを捻って温かいお湯を浴びながら、空を見上げる。
 もう太陽は真上ほどまで登っていて、そういえば今何時なのかも確認していなかったと気が付いた。

 家に居れば何かと家事をしてしまうし、こんなふうに時計を見ずに昼過ぎまですごしたのは、いつ振りだろうか。
 ゴールデンウィークに行った温泉旅館は、朝ごはんの時間とかあったから、目を覚ましてからそこまでゆったりはしてなかったのよね、と考えてみれば、このラブホテル連泊というのはかなり、リフレッシュ休暇としては優秀なのではないだろうか。

 モーニングサービスではないから、前日頼んでおいた朝ごはんを9時までに食べて、10時にチェックアウトだ。なんて考えなくていいし。

 ――まぁでもこれが、最初で最後のラブホテル連泊だろうし。

 通常、ラブホテルは一泊が普通だし、ラブホに連泊できるだなんて聞いたことがない。
 まーから聞いた話ではあの淡いピンク色の封筒はかなり特別なものみたいだったし、あれを持っている人だけが連泊を許されるという。

 そんな貴重なものきっともうわたしの手には渡ってこないだろうし、これは一生で最後の、「ラブホテル連泊旅行」になるのだろうから、思い切りリフレッシュ休暇を楽しもうと心の中で誓った。

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