隣恋Ⅲ~のたり~ 12話


※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ のたり 12 ~

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 唇を離したあと、柄にもなく照れて、彼女の胸にぐりぐりと額を押し当てた。

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「なんです? もう、可愛いなぁ」

 顔を伏せたわたしには見えないけれど、きっとその口元は緩んでいるのだろう。声が笑いを含んでいる。

 わたしは「可愛くはないんだけど」といつものように否定をしてから、雀ちゃんの腰に腕を回して抱き着いた。

「だって、雀ちゃんがあんまりにも優しいから」
「そりゃまぁ誰だって、好きなひとには優しくするじゃないですか」

 ――わかってない。自分がどれだけわたしに優しくしているのか、分かってない。

 当然の事のように言わないで。
 それはきっと、わたしが貴女から与えられている格別で特級の優しさなんだから。

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「好きよ、本当に」
「嘘だなんて思ってませんし、私も愛羽さんの事、大好きですよ?」

 顔をあげて、彼女を真っ直ぐ見れば、優しい瞳がわたしを見返してくれる。その上、さらに、甘い言葉。
 込み上げた熱い感情に思わず、もう一度彼女の唇を奪って、きゅうと腕に力を込めた。

「幸せすぎて、ちょっと恐いくらい」

 唇を離した至近距離でそう告げると、彼女は柔らかく目を細めて、わたしの髪を撫でる。指の間を髪が滑ってゆくその感覚はたまらなく気持ちいいし、その髪一本一本に、彼女からの愛情を受けているようで、熱い胸がジンジンと痺れてくる。

「こんな事くらいで、そんな風に言ってもらえるのは嬉しいですけど。愛羽さん、大袈裟ですよ」

 額同士をコツ、とぶつけて、間近で微笑んでくれる彼女が愛しくて、甘くて、ちょっとだけ切なくて、わたしはもう一度、彼女にキスをするべく、軽く踵を持ち上げた。

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 まったり、ゆったり、甘々と啄むキスを繰り返していると、名残惜しそうに雀ちゃんがわたしの背から腕を離す。

「ねぇ、愛羽さん、折角だから露天風呂入ります?」
「…ん……ぅん、いいね。入ろっか」
「じゃあお湯、今から溜めておきます」

 にこ、と笑った雀ちゃんの腰から腕を解いて、和室から見送る。
 彼女が扉の向こうに消えるまで見送っていたけれど、姿が見えなくなって、私は自分の顔を両手で覆った。

 ――ふぅああぁ……どうしよ……すごいすき……。

 きっと今、顔、赤い。
 だってわたしったら、ご飯もすぐそこにあって、カレーなんていうお腹の減る匂いのする料理のすぐ横で、お腹を空かせている雀ちゃんのこと、放してあげられなかった。
 キスを止めたくなくて、意図的に長引かせるように巧妙にキスをしていたことを、彼女は気が付いていたのだろうか。

 ――気付かれてたら……すごい……恥ずかしいんだけど。

 それでもいいかと思えるくらいには、彼女に惚れているし、キスもしたいし、抱かれたい。
 ベッドの上での戯れが、尾を引いていて、身体が彼女を求めている。

「腰、だるいくせにね」

 自分に突っ込みを入れるように呟いた瞬間、ガチャと扉が開いたので、慌てて口を閉じて、障子の横から顔をのぞかせた。

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「おかえり。ありがと」

 いえ。と微笑む雀ちゃんは軽く扉の方を振り返って、露天風呂のことを指す。

「近くで見るとやっぱりデカイです、あの風呂」
「入るのが楽しみね」

 若干、目を輝かせている彼女が可愛い。
 きっとお湯の蛇口を捻りながら、わくわくうきうきして空のお風呂を眺めたに違いない。

 そういう所は子供っぽいのに、他の一面では大人っぽい所を見せる。
 なんともギャップが素敵な恋人が座椅子に座ったのでそれを見倣って、わたしもその正面の席についた。

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