※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 6 ~
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びっくりして、目を開けながら、舌を引っ込めた。
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そんなわたしの目に映ったのは、同じくびっくり顔の雀ちゃん。だけどすぐに、真っ赤になっていくその顔。
「す……すみません……」
と、彼女が言うことはつまり、雀ちゃんのお腹がぐうと鳴ったのだろう。
ごめんとは思う。
ほんと、笑っちゃいけないんだろうけど。ほんと、ごめん、雀ちゃん。
わたしは思わず、吹き出した。
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けらけらと笑いながら、脳内で、先程の物凄く大きい音で鳴いたお腹のはらぺこ虫を思い出す。
「雀ちゃん、ぐぅるるるって」
「わ、笑わないでくださいよぅ」
ご、ごめん、と言いながらも笑ってしまう。だって、あんな大きいお腹の音、滅多に聞けるものではない。
恥ずかしそうに真っ赤になっている彼女には悪いけれど、もうすこしだけ笑いが納まるまで待ってもらう。
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襲ってきた方のお腹が鳴るのが、また、面白い。
仮に、わたしのお腹が鳴ったとしたら、まぁ仕方ないねと思えるけれど、何か琴線に触れたようで感極まってキスしてきた雀ちゃんのお腹が鳴るだなんて。
「ふふふ、華より団子……ふふふ」
だめだ。笑いが止まらない。
揶揄う言葉も笑いの波に埋もれてしまいそうなくらいにおもしろい。
「違いますよぅ、ちゃんとお華の方が好きですって」
情けない声で言い訳しているけど、実際お腹があんな大きな音で鳴っているので、なんとも信用度ゼロの言葉だ。
でも、あまりに情けない顔を彼女がするものだから、それもまたわたしの目には可愛いく映る。
わんこにそうするみたいに、寝乱れたままの髪を両手でわしゃわしゃと撫でて、わたしはやっと、笑いを納めた。
「わたしもお腹すいちゃった。ご飯、注文しよっか」
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これ以上キスや、その次に進める雰囲気ではないので、彼女の腕の中から抜け出して、サイドテーブルにある黒いファイルを手にとった。
ヘッドボードに背中を預けて、裸の胸に掛け布団の端を抱いて前を隠す。
「ほら。そこで拗ねてないでこっちおいで」
「別に拗ねてないですもん」
「分かった分かった」
わたしが座った隣をぽんぽんと叩いて誘うと、まだ寝転がったままの雀ちゃんが、唇を尖らせて言う。
明らかに、拗ねた仕草で。
可愛い。
「拗ねてないならこっち来てわたしにキスしてくれるでしょ?」
両膝を立てて、体育座りをしたわたしの言葉に、仰向けのまま雀ちゃんが首を巡らせ、こっちを向いた。「ん?」と誘うように小首を傾げてみせると、いそいそと起き上がってこちらへやってくる。
――可愛い。なにあの可愛いさ。まだちょっと拗ねてるくせにキスしたいからこっち来るとこがもう可愛い過ぎるんだけど。
内心、悶えて、その可愛いさ故に笑いが込み上げてきそうなんだけど、ぐっと我慢して、すぐ隣までやってきた雀ちゃんに顔を向け、目を閉じ、軽く顎をあげて、キスを待った。
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ちゅ。と小さく重なった唇が離れたので、目を開けると、まだ至近距離に彼女がいた。
キスする前より、拗ね度合が減っているのがまた可愛い。
「ほんとに、団子より華ですからね?」
念を押すように言われて、一瞬、何のことか分からなかった。
でも、さっきわたしが彼女を揶揄った言葉だと気付いて、更に、そこに拗ねていたのかと気付いた。
わたしはてっきり、お腹が鳴るという生理現象を笑われて拗ねているのだとばかり思っていたけれど、違ったみたいだ。
華……つまりわたしより、食い気だね。と言われた事に拗ねていたらしい。
自分は食い気よりも愛羽さんが好きなのに。たまたまお腹が鳴っただけなのに。団子より華だという主張を、分かってくれてない。
そう、拗ねていたらしい。
喉元まで「それで拗ねてたの!?」と出掛かったけれど、ぐっと堪えて、彼女の頬に手を添えて、キスをする。
何度か甘く啄んで唇をそっと離れ、
「分かってる」
と囁いた。
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