※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 4 ~
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「すみません」
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一瞬だけ嬉しがった口から、謝罪の言葉。建前とか、”とりあえず言っておけばいいか”みたいな適当なものでなくて、本当に悪いと思っているのが伝わってくるのは、彼女の声色がそういうものだからだろう。
そしてさらに、照れていた筈の彼女は自分の感情などぽいと捨てて、横向きに寝返りを打つとわたしの腰へと手を伸ばす。
わたしに触れた温かい手は、布団の中で重だるい腰をさすってくれた。
「ありがと」
こういう優しい事を、こちらが要求しなくてもやってくれるのが彼女なのだ。
経験上、「腰がだるい」と男性に言っても、大概「へへっ」と笑うだけなのだ。「俺、やってやったぜ」とか「俺のって凄いだろ」みたいな意味のその笑い。
中には優しい性格の人も居て、腰を撫でてくれたけれど、まぁ……数回が限度。
雀ちゃんのように、毎度毎度、朝になると体について質問をしてくれて、不調を訴えるとすぐにこうして撫でてくれたりするひとは、初めてだった。
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いつだったか忘れたけれど、丁度、生理になる前日にえっちをして、朝起きたらまだ出血はなかったんだけど明らかに生理だと分かる頭痛と腰痛と腹痛がひどくて、雀ちゃんのお世話になったことがある。
あの時は確か、わたしの方が先に目を覚ましていて、「雀ちゃん起こすの可哀想だけど頭いたいお腹いたい腰重たいしいたいどうしよう……」と吐息で唸っていた所、彼女が起床。
すぐに顔色の悪さに気が付いた雀ちゃんに心配かけないように「もうすぐ生理の予定だから」と告げれば、心配と不安と申し訳なさを混ぜた瞳から、不安だけスッと伏せて、わたしの額にキスをしてベッドから下りたのだ。
そのまま寝ていてください、と告げて、脱ぎ散らかした服をささっと身に着け、部屋の中から、いろんなものを手際よくかき集めてきた。
そうして5分後には、わたしはベッドの中で、雀ちゃんのタンクトップを着て貼るホッカイロを腰とお腹に装備して体を起こし、お湯を注ぐと出来上がるカップスープを飲ませてもらって、そのあと、痛み止めの薬を飲ませてもらったのだ。
あの時の彼女はまるでベテランの看護師さんみたい手際がよかったし、本当に、助かった。
一人暮らしだと、体調を崩しても自分の面倒は自分で看なければいけないから、ああいうふうに世話をしてもらうと、本当に助かるのだ。
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思い出に浸っていると、思わず笑みが零れ、雀ちゃんに不審そうな顔をされてしまった。
「雀ちゃんってえっちの後毎回、そうやって心配してくれるなーと思って」
良い意味でだけど、他の男と比べてましたとは決して口にしない。そんなの誰だって嬉しくはないだろうし、喧嘩の種になりそうなものは撒く必要はない。
「え、そんなの、当たり前じゃないですか」
だからそんなの当たり前って言える性格が素敵なんだってば。と心の中で返して、わたしは頬杖を解いて、彼女の胸に擦り寄った。
「ありがとう。雀ちゃんのそういう優しいとこ、大好きよ?」
彼女の胸に顔を埋めるようにして、抱き着くと、当然のように背中に回ってきて抱き締め返してくれる腕にきゅんとする。
「私も、愛羽さんが大好きです」
まるで昨日の、眠りに入る前のような体勢になったわたし達は、お互いの体温にほぅっと幸せの溜め息をついた。
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