※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ 謎の小瓶 5 完 ~
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こちらからのメッセージを送って数秒で、既読がついた。
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なんてメッセージが返ってくるのかそのまま見守りつつ、目尻に滲んだ涙を指で拭う。
シュッ、と入ってきたのはメッセージではなくて画像だった。
エドヴァルド・ムンクの「叫び」。
その有名すぎる絵画は、絵を思い浮かべられる人は多いだろう。
しかしあの絵を、「ムンクの叫び」というタイトルだと思っている人が多い。そうではなく、ムンクさんが描いた「叫び」というタイトルの絵だ。
そしてあの絵の中央に描かれている人物は叫んでいるのではなく、つんざくような叫びを聞いて、耳を塞いでいるのだと、私は聞いたことがある。
「いやなんか普通にスタンプとかじゃなくてガチの絵画やないかいっ」
つい一人で突っ込んでしまうのは、まーさんが私の予想の一枚か二枚上手なボケをしてくるからだ。
まぁこれを「ひえぇヤバイどうしよう」という意味で使っているのは理解できるんだけど、それが『媚薬仕込んで説教されたの覚えてないんですかっ?』に対してなのか、『まだどこ行くのか愛羽さんから聞いてません!』に対してなのかは謎だった。
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しかし、だ。
これで昨日のまーさんの言っていた言葉の一部が解明された。
「すずちゃんだけに、あげるから。愛羽には見つからないように」
「愛羽に、飲ませるんだ」
「別にすずちゃんが飲んでもいいけど、まぁ半分こか、それか愛羽に多く飲ませた方がいいと思うよ」
うん。これらの意味は、理解した。
媚薬を愛羽さんに見つからないように、デート先に持っていって彼女に飲ませろっていうんだな。
その飲ませる割合は愛羽さん多めというのも、別に半分でも構わないというのも、まぁ分かった。
その結果どういう事態になるのかを想像して、参考に前回まーさんに媚薬を仕込まれた愛羽さんを思い出して、赤くなった顔を片手で覆った。
あの時は……すごかった。
それに、知らない間に私にも媚薬は盛られていたようで、あの夜は激しかった記憶がある。
『ひええええ』
『やっちまった』
『てっきり昨日のうちに聞いてると思った』
それぞれのメッセージの間に、「叫び」の画像を挟んでくるのをやめて欲しい。
じわじわくる笑いを誘われないようにしながら、
『媚薬って一旦忘れて!』
というメッセージにソッコーで、
『無理ですよ!』
と返事をした。
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いやもう媚薬とか朝から聞かされて綺麗さっぱり眠気なんて吹き飛んだ。
『じゃあ媚薬の事は愛羽に隠し通せ! 使う使わないは自由だけど隠し通すんだ!』
無理ゲーすぎる……。
私の表情見て、何考えてるか見抜くのは愛羽さんの得意技だぞ。
隠し通せるわけがない。
私がそういうのを苦手だと分かってて言ってるんですかと返信してやろうとしたとき、まーさんから連投メッセが来た。
『あ、電車きた。さいならー』
『逃げた! まーさん!』
すぐさま送り返した返信に、既読が付かなかった。
本当に地下鉄に乗って電波が届かなくなったのか、それか、意図的にアプリを閉じたかだ。
「……」
とりあえず、隠さなきゃ。
見つかったら絶対コレなに? って不自然にラベルの剥がされた小瓶について尋ねられるだろう。
私は隠し場所に迷った挙句、勉強机の上に立てて整頓してあるノートとノートの間に隠した。
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とりあえず、小瓶を隠せたことに満足して、ほっと息を吐く。
媚薬なんてもの、まーさんはどこから入手してくるのか。
アダルトコーナーとか友達とふざけて入ったことあるけど、そんな薬みたいなもの、置いてなかったぞ?
あるのは、マカとかスッポンとかの強壮剤程度なものだ。
あぁでも、ああいうのも栄養ドリンク的な、この小瓶みたいな容器に入ってたなぁ……。
前回もどこかから調達してきてたのは、スゴイ効き目だったし、今回のも威力あるんだろうなぁ。
次の日、二日酔いみたいな副作用もあったけど、今回のはどうなのだろう。
そこまで考えて、はっとする。
自分は、使う気満々じゃないか。
まだどこにデートに行くのかも、知らされていないのに。
愛羽さんとまーさんの会話を総合してみると、どうやら泊まりで行くのでは? と思っている。
まーさんから愛羽さんが何かを譲り受けて、それが泊まりデートに何かしら影響しているとみた。
だが、情報はそのくらいなもので、この少ない材料から行き先を導き出すのは、至難の業だ。
「……愛羽さんに聞いてこよう」
ちゃんと起きてるのかも、心配だし。
時計を見れば、6時45分になろうとしていた。
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