隣恋Ⅲ~ひねもすのたり~ 1話 完


※ 隣恋Ⅲ~ひねもすのたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 ~ ひねもすのたり ~

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 ふ、と意識が浮上した。

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 大好きな愛羽さんに風邪を引かないように抱き締めていてとお願いされて、「大好きよ、雀ちゃん」と続いて甘い言葉をもらって。
 私も大好きだと告げてキスをして。

 その後なにかしたのか、それともすぐに眠りについてしまったのかはもう記憶にない。

 だけど、腕の中にこうして愛羽さんを抱き締めているということは、まぁ、そのまま眠ってしまったのだろう。

 すぅすぅと規則的な寝息が聞こえてくる。胸にその息がかかって、少しだけくすぐったいけれど、眠ってる彼女は可愛い。
 目を開けないまま、彼女の裸の背中を撫でれば、なんともいえない、胸がじわああぁと熱くなるような何かが込み上げる。

 そこで、霞がかっていた記憶の一部がクリアになった。

 ――朝、起きたらきっと分かるわ。
 ――何がです?
 ――んー、裸で寝る良さ?
 ――期待しておきます。

 そんな会話を真っ暗な部屋で、布団にくるまって、囁き声で交わしたんだった。

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 ――うん。確かに。これは、いい。

 胸に込み上げた熱い何かは、多分、”幸せ”というやつではないかと思う。
 彼女のさらさらの肌を撫でてやると、むずがるように「んん」と鼻にかかった声が鼓膜をくすぐってくる。

 ――可愛いなぁ。

 この閉じた瞼を開ければ、きっと、可愛い寝顔を拝むことができるのだろうけれど、まだ眠気を完全に追い払えていない私は、もう少しまどろんでいたくて、目が開けられない。

 それに、こうして肌と肌の大部分が触れ合っていて、お互いが温かくて、幸せで。
 これだけでもう十分だと思えてしまうくらい、幸せで胸がいっぱいだ。
 なのに更に、可愛い恋人の寝顔を見たいと思っては、罰が当たってしまいそうで、こわい。

 数日間、お預け状態をガマンしたり、愛羽さんを会社に車で送ったり、差し入れの買い出しに付き合ったり、「酔」まで車で迎えに行ったり。そのくらいしかしてないのに、こんなにも幸せなご褒美をもらってもいいのだろうかと不安になってしまう。

 このラブホテルの無料宿泊券をくれたまーさんには、何かお礼をしなくちゃいけないだろう。
 なにがいいかな。

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 彼女が喜びそうなものを色々と思案していると、急に、愛羽さんが動いた。
 なんとなくそのまま二度寝にしけ込むつもりだった私は、腕の中で身じろいだ彼女にちょっとびっくりして、目を開けた。

 一瞬焦点が合わなくてゆらっとした視界に映るのは、こちらに擦り寄ってきた彼女の顔のドアップ。真っ暗な部屋でも、キス寸前まで顔を近付けられると、さすがに、見える。
 喉の奥で唸りそうになった声をなんとか吐息に変えて吐き出す。

 ――きゅ、急にそういう……どきどきするような事は……ナシですよ、愛羽さん……。

 情けない心の声をぶつけるように、彼女の背中に回していた手で、そのぷにぷにの頬をつつく。

「んー……」

 ちょっと、迷惑そうに、顔を顰めるところが可愛い。むずがるようなその、口元も。

 心臓がきゅうと掴まれたようにときめく。
 付き合ってもうだいぶ経つし、それこそセックスだって何度もした。
 なのにこうして胸をときめかせてくれる彼女の可愛いさ。

「好きですよ。愛羽さん」

 起こしてしまうかもしれないけれど、言わずには居られなくて、私は出来るだけ小声で、囁いた。

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「ん……?」

 しまった。やっぱり起こしてしまった。

 愛羽さんはもともと、眠っていても人の動く気配で目を覚ましやすい、眠りの浅い人なのだ。
 そりゃあ、キスできそうなくらい近くでは、いくら囁き声にしたって彼女は目を覚ます。

 ――あああごめんなさい愛羽さん。まだ眠ってたのに。

 申し訳なく思うと同時に、私の声を拾ってくれて反応してくれたことに、胸がぽっと温かくなる。
 眠るというのは無視とはまた違うけれど、それでも、言った言葉に反応がないのは、少し寂しいものだから。

「ふ……」

 甘ったるい寝起きの声を短く漏らした彼女が、まだ眠るかもしれない。まどろむような気配をみせたので、私はそーっと、その髪を撫でた。
 出来るだけ軽いタッチで、ふわあっと撫でる。
 昨日むりをさせてしまったから、もう少し、寝かせてあげたくて。

 ふわあっと。ふわあっと。

 気持ち良くなるように、心地良くなるように。

 ゆっくりゆっくり撫でていると、愛羽さんはむずがるように、「んん」と声をあげた。
 そして、横向きで彼女を抱き締めていた私の、体の下側になっていた左腕をなぜか、ぎゅっと抱き締める愛羽さん。

「…っ…」

 二の腕と肘あたりに、ぎゅっと。そりゃもう、むぎゅっと、押し付けられる豊満な彼女の胸。
 声を殺せた自分を褒めてやりたい。ていうか、誰か、褒めて。

 どうして彼女がイキナリこんな色仕掛けみたいな行為をしたのか謎だ。
 もしかしたら、もう、目を覚ましていて狸寝入りしながら、私の反応を楽しんでいるのかもしれない。はたまた、本当に寝ていて、夢でも見ているのかもしれない。

 そのどちらなのか判断が出来なくて、私は頭を撫でていた手を止めて、彼女の様子を窺った。

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 黙ったまま、動きを止めたまま、多分30秒は過ぎた。
 それでも彼女は私の腕を抱き締めたままだし、双丘の谷間に潜り込むポジションにいる腕にくっついてる胸は相変わらず柔らかいし温かい感触。

 ――裸で寝る良さってのはこのことか……?

 なんて馬鹿な考えさえ浮かんできて、私は動きを止めていた手を、ゆっくりと彼女の頭にのせて、ふわりと撫でた。

 すると、少し、擽ったかったのか首を竦める愛羽さん。
 まどろみながらも、彼女の身体は敏感なようだと思うと、小さく笑いが込み上げる。

 ――ほんと、可愛いなぁ。

 顔がほころぶというのはこういう事を言うのだろうかと思う程に、口元に笑みは浮かぶし、目元は緩む。
 もう一度、可愛くて可愛くて仕方ない恋人を撫でようとした瞬間だった。

 ビクッ!! と彼女の身体が跳ねたのは。

 あまりに突然の事で、私はもちろん目を丸くして声も上げられずに驚いたけれど、当の本人である愛羽さんも、くわっと目を開いて、何が起きたか理解出来ていないように呟いた。

「び……っくりした…………」

 もしかしたら、アレかもしれない。
 夢とか見てて、ジェットコースターだったり、バンジージャンプだったり、落とし穴だったり。なんか、高い所から落ちる系の夢で、びくっとして起きるやつ。

 私も身に覚えがあって、あれを体験した瞬間の驚きようというのは本当、心臓が口から出るんじゃないかと思うレベルだ。

「だ、大丈夫ですか?」
「ふぇ……?」

 ふぇ、だって。可愛いなぁもう。これは完全に寝ぼけてる。
 ちょっと心配だし、電気、つけよう。

 私は布団から腕だけ伸ばして、枕元の電気のスイッチに手をかけた。

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