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深夜、私がバイトから帰ると、一番に確認するのは、ベッドが膨らんでいるかという事。
布団がもっこりとしていれば、大好きなひとがそこに居てくれる証。
大体はもっこりしているんだけど、たまに、ぺたんと平坦な時があるから悲しい。
まぁ……わざわざひとの部屋に来て寝てくれとお願いするのもおこがましいし、愛羽さんだって予定とか、都合とか、気分とかあるだろう。
だからあまり、贅沢は言っちゃいけない。
そんな事を考えつつ、リビングのドアを開けて真っ暗な部屋のキッチンの電気を点ける。少しでも、愛羽さんの眠りを妨げない為の配慮、と思ってやっているのだけど……効果があるのかどうかはちょっと怪しい。
部屋の天井から煌々と照らす訳ではなく、ベッドから一番遠い灯りを点すのだから眩しさも少々違うだろうが……結局は少々の差なのだ。
そんなふうにして照明を点けた室内に視線を走らせ、ベッドを確認する……と、ベッドはもっこりしている。
よかった。今日は居てくれた。
じんわりと温かくなる胸に眉尻を下げつつ、ゆっくりとそちらへ近付く。
すると、こちら側に向けられているのは寝顔ではなく、後頭部だった。
うーん、残念。
帰って来て、ベッドのもっこり具合を確認して、そのあと彼女の寝顔を眺めるのも好きな時間なんだけど、向こうを向いているなら……仕方ない。
彼女の可愛い寝顔は諦めて、私は静かにその場から遠ざかった。
愛羽さんが用意してくれていた夕食? 夜食? をありがたく平らげて、風呂へ入り、寝る準備を済ませた私は、ベッドに近付いて表情を緩めた。
――可愛いなぁ。寝顔。
布団を捲り、いそいそとそこへ潜り込む。この時ばかりはベッドを揺らしてしまうのは申し訳ないが、少しくらい目を覚ましかけても、腕の中へ抱き込んで、ぎゅっとしていると愛羽さんはすぐにまた深い深い夢の中へと戻っていく。
だから今日もいつものように……と抱き締めかけた瞬間、小さく唸り、眉根をくっと寄せた愛羽さんが寝返りを打った。
ころんと、向こうへ向けて。
つまり私の目の前には、可愛い寝顔ではなく、パーマのかかった髪。後頭部だ。
「ぇぇぇ……」
限りなく小さく留めたけれど、不平の声が漏れる。漏らさずにはいられない。
だって、なんでわざわざこのタイミングでそっち向いちゃうんだ。寂しいじゃないか。
――愛羽さん。
心の中で呼び掛けようと、その声はもちろん届かないので、彼女からは規則正しい寝息しか聞こえないし、こっちへ寝返りを打ってくれる気配もない。
ならば実際に呼んでみせようと口を開きかけ……やっぱり止める。
だって……起こすのは、可哀想だ。
背中を向けられて寂しいから起こそうとするだなんて、何を考えているんだ。
自身を叱咤して、私は嘆息を吐いた。
胸の中では「別に完全に起こそうとした訳じゃなくて、ちょっと寝ぼけ眼くらいまで意識を浮上させたかっただけ。そうしたら愛羽さんはいつも抱き着いてきてくれるもん」と言い訳を並べ立てている声もあったけれど、意識的に無視をして、私は枕に頭を預ける。
明日の朝になれば、おはようと笑顔を向けてくれるからそれまでの我慢だと言い聞かせて。
――おやすみなさい。愛羽さん。
背中に聞こえない声を掛けて、私は目を閉じた。
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