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最初は煩悩払いの目的の八つ当たりだったけれど。
やはりゲーム好きの私がそれを始めれば、集中しないワケがなくて、ミュートにしていて効果音無しという過酷な状況でも、私はそれを楽しんでいた。
だけどいきなり。
「ぁむ」
と、耳の後ろで声がしたと思ったら、耳をばくりと口に含まれた。
「ぅっ!?」
まず最初に、びっくりした。
てっきりまだ眠り続けていると思っていた彼女が突然動いたことや、耳の傍で声が立ったことに、驚いた。
そしてその直後に、咥えられた耳が、彼女の口の中で彼女の舌によってれろりと舐め上げられて、私は持っていたケータイを取り落とした。
まだ、戦闘中だったのに。
頭の中に、キャラ大破音が勝手に再生されるけれど、それどころじゃない。
だって愛羽さんが、ケータイを取り落とす様子や、首を竦める私の反応を笑っているんだもん。
相変わらず、耳を舐めながら。
「ぁい、は、さ……っ」
「んふふ……かわい……」
ちゅぷ、と音をたてて一旦解放されるけれど、すぐにまた、濡れた熱は私を舐め始めた。
今度は、耳の内側。孔へ向かって、ひだを一つずつ丁寧に舐めてくる。
鼓膜を揺らす水音が、私の肌を粟立たせる。
うなじや首、背中はもちろん、頬にまでプツプツと鳥肌が立つ。
「ちょっ、と……愛羽、さん……!」
これはマズイと焦った私は、仰向けになりつつ、ぐりんと首を捻って彼女の口から逃げた。
濡れた耳に空気が触れ、ヒンヤリとする感覚に、また鳥肌の波が肌を襲う。
霞みかけた視界で、私を背後から襲う愛羽さんを認めれば、彼女は寝起きには似つかわしくない表情でこちらを見下ろしていた。
「おはよ。気持ち良かった?」
てらと光る唇で弧を描き、朝の挨拶の後に不釣り合いな台詞を乗せ、愛羽さんはまだ足りてないというように、返事も聞かず私の唇を奪った。
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