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日の出が早くなってくると、カーテンの隙間からの光で、随分と早く目が覚めてしまうことがある。
サイドボードから静かに取り上げたケータイで時間を確認すれば、まだ5時半だ。しかも今日は、休みなのに。
なんか損した気分だなぁ、と思いつつ欠伸を漏らし、ちらと隣を確認する。
「……」
――可愛い。
愛羽さんの寝顔は格別、あどけなさが増して、可愛い。
恋人フィルターかけすぎだろ、と言われてしまうかもしれないけれど、こうしてスッピンで、あどけなさ全開にしていられると、高校生に見えなくもないと私は思う。
すー、すー、と規則正しい寝息を立てている彼女。
昨晩の乱れようとは打って変わって、爽やかで穏やかだ。
――昨日の夜も、可愛かったなぁ。
見られていないのをいいことに、だらしなく顔をにやけさせる。
脳裏には、可愛くて色っぽい嬌声や、途中まで照明を点けていたので眼福を許されたなまめかしい姿態が思い浮かぶ。
……やばい。
こんなに安らかに眠っている恋人に、ちょっかいを出したくなってきてしまったじゃないか。
いけないいけないと内心首を振り、煩悩を振り払う。
平日ずっとお仕事を頑張ってきた愛羽さんなのだ。休日の朝くらい、ゆっくり寝かせてあげないと。
起こさないようにそっと、指の背で頬を撫でるだけに留めて、私は静かに寝返りを打った。
彼女に背中を向けて、ケータイのアプリを立ち上げる。もちろん音はミュートだ。
毎日コツコツと進めているゲーム。もうレベルも上がり過ぎて作業ゲーになってきているんだけど、たまに追加ストーリーや武器が増えるからなんとなくやり続けている。
そろそろコレやめて、他の新しいアプリダウンロードしようかなぁ……なんて思っていると、背後で「ぅん……」と小さな声がした。
え、起きた? と首だけで振り返りかけると、私の腹に腕が乗せられた。そして、しゅり、とシーツの擦れる音と共に、私の首の付け根辺りへ何かが押し当てられる感触。
「……」
目が覚めたのなら、彼女はおはようと言うはず。
でも、言わない。
そして、結構至近距離で、相変わらず、すー、すー、と聞こえる寝息。
「……」
体勢的に、たぶん、愛羽さんがおでこを私の首辺りへ押し付けるようにくっついて、背中から抱き着いているんだと思う。
振り返りかけた姿勢で固まったまま、私は内心叫んだ。
――めっちゃくちゃ可愛いんだけど……っ!?
起きてても可愛いのに、寝てても可愛いとか反則だろ。
ずるい。ずる過ぎる。
そんな可愛いことされても、私は愛羽さんが眠っている限り手は出せないというのに。
くそーっ! と心の中で叫びながら、私はゲームの敵に八つ当たりをすることに集中した。
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