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――最近、愛羽さんに抱かれることが増えた気がする……。
私は2回も絶頂を迎えさせられて、ぐったりとベッドへ転がったまま、そんな事を考えた。
まぁ単純に、彼女が女同士の行為に慣れてきて、やり方が分かってきたから。と、そういう理由もあるだろう。
だけど、ついこの間、私の高校時代の話を聞いてもらってからは……なんか、こう……彼女が向けてくる目がなんとなく変わった気がするんだよな……。
別にイヤな感じとかじゃなくて、なんていうか……見られてるだけで「大好きよ、雀ちゃん」と言われているような感覚に陥るというか……。
言葉にするのは難しくて出来ないんだけど、なんか……そんな感じ。
「体、へいき?」
「その点は問題ないですけど……」
ばふっと私の隣へ体を横たえた愛羽さんが、「けどなに?」と問うてくる。
「愛羽さん、タチに目覚めたんですか?」
「ん? 別に? どっちでも。ていうか雀ちゃんがする回数の方が各段に多いでしょうに」
なにを言い出すかと思えば、と呆れたように笑いながら私の髪を撫でてくる愛羽さん。
私を抱いた後の彼女は、どこかしらちょっと、仕草にイケメン感が入っていて、カッコイイ風に見える。……私の気の持ちようなのかもしれないけれど。
「なぁに? わたしに抱かれるのは嫌かしら?」
「ぃ、嫌とは言いませんけど……なんか……恥ずかしいし、私がする回数減るのはやです」
まだ抱き足りた、満ち足りた、と感じたことは一度もない。
毎回セックスの度思うのは、「まだ足りないけど、このくらいで止めておかないと、可哀想だよな」という不満と遠慮だ。
満足度をバケツで表示すると、下から3分の1程度が満たされたくらいで、まだまだ、させてもらえるならしたい。
今日だって、愛羽さんがぐったりしたから已む無く、3回で止めたのに、なんか知らんが、愛羽さんが攻めに転じてまたセックスが始まったのだから……。
彼女に抱かれる事自体は嫌ではないが、その体力があるなら4回目もイケたんじゃないのか? もったいない。としか思えなかった。
「あれだけしておいてそんな事言う?」
「これでも我慢してるんですよ。毎日でもしたいのに」
え゛、と愛羽さんが固まった。
「ま、まいにちって……雀ちゃん……」
「現実的に無理だって分かってますよ。愛羽さんの仕事もあるし、私だってバイトも学校もあるし。だから出来ないのは分かってますけど、私の気持ちとしては毎日でもしたいです」
言い切ると、愛羽さんの手が、私の頭からそろりと引かれる。
「……若者の性欲こわい」
「愛羽さんだって若いじゃないですか」
何言ってるんだそんな幼い顔で。とは口にしないけれど。
そんな童顔で、若者とか言わないで頂きたい。
だけど彼女はぷるぷると首を振って「毎日とか腰が壊れちゃうから」とか言っている。
「ちゃんと終わったらマッサージしますから」
「確かに雀ちゃんのマッサージは気持ちいいけど」
そういう問題でもないのよねぇ、と遠い目をして言う愛羽さん。
確かに抱くより、抱かれる方が体力消費が激しいのは理解できるから無理強いはしないけど。
「愛羽さんが大好きだっていう気持ちを伝えたいんですよ」
1グラムでも多く。1秒でも長く。
私の言葉に軽く目を瞠った愛羽さんは、ゆるりと笑う。
「十分、伝わってるわ」
「ほんとですか?」
「本当。貴女には大切にしてもらってるもん」
いつもありがとね。と優しく微笑まれると、それだけで、私は更に好きになってしまうのだ。
だからきっと、まだまだ伝えきれてない。足りてない。
好きで、好きで、大好きな彼女には、もっともっと、伝えていかなきゃ。
「大好きです、愛羽さん」
「わたしも、大好きよ」
私達は、どちらからともなく、口付けを交わした。
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