隣恋Ⅲ~夕立騒ぎ~ 10話


※ 隣恋Ⅲ~夕立騒ぎ~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※

※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※


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 荒い呼吸を繰り返してしばらくの後、ゆっくりと愛羽さんの脚の力が弱められた。

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 ~ 夕立騒ぎ 10 ~

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 緩んだその脚の間で私は身動ぐ。
 今までずっと、絶頂で強張る脚に耳や頬を挟み込まれて動けなかったのだ。

 それはある意味、幸せな時間だったかもしれないけれど、私にとっては苦痛の時間だった。
 なにせ、目の前にとんでもなくエロい部分がある。だけど、流石に絶頂を迎えている最中に愛撫を再開する訳にはいかない。

 がまん、がまん、我慢の時は長かった……。

 だがそれもやっと終わった。
 きっと時間にすれば1分もなかっただろう。愛羽さんの呼吸はまだまだ落ち着いていないから。

 静かな部屋に愛羽さんの甘声混じりの呼吸音が広がる中、解放された私は顔を持ち上げた。
 視線を魅惑的なそこから引き剥がし、浮かせる。その先にはドキリとする程に、甘くて色香に満ちた表情の彼女が居た。

 薄く開き乱れた息を繰り返す唇。
 切なそうに寄せられた眉。
 少しだけ虚ろで、潤みきった瞳。

 私は思わず立ち上がり、覆い被さるようソファへ片膝を着いて、彼女に口付けた。

「……ん……」

 鼻から抜く甘い声。
 すぐに私の舌を求めて、忍び込んでくるやわらかい舌。
 ぐちゅりと、私の唾液をかき回す音が頭の中へ響く。

 たまらない。
 愛羽さんをイカせた時から私の心臓はドクドクと強く脈打っていた。
 だけどそのときよりも、さっき彼女の顔を見上げた時のほうがドキドキした。いや、ドキドキなんて通り越していてバクバクだったし、今もそうだ。

 だって彼女がこんなにも乱れて、私を求めてくれるだなんて。
 だけど。
 それでも、私は更に思ってしまう。

 もっと、もっと、乱れて、求めて。
 今以上に、もっと。

 他の誰にも見せたことがないくらいに乱れて欲しい。
 私だけに、見せて欲しい。

 口付けを解きながら、彼女の下半身へ手を伸ばす。残っている唯一の下着に手をかけた瞬間、「お願いが、あるの」と愛羽さんの声。

「?」

 手をとめて彼女を見つめる。
 とろんと蕩けた瞳を覗き込んで次の言葉を待っていると、突然ハッとしたようにたじろぎ、愛羽さんは言葉を詰まらせた。

「ぁ。う、んーん、なんでも――」

 なんでもない。そう言いかけた口をキスで奪って塞ぎ、一旦下着にかけていた手を戻す。
 何か言いたいことが彼女にあるなら聞くべきだ。

「言って?」

 噤んだ言葉の続きを促す。けれど、迷いか遠慮か。なんらかが愛羽さんの口を重くしているようで、なかなか続きは聞かせてくれなかった。

「言いたくない?」

 言いかけたのだからそういう訳ではないだろう。が、そう問うことで否定を引き出し、果ては愛羽さんのお願いを引っ張り出してやろうとの魂胆。
 普段の聡明な彼女ならば私の計略も気付きそうなものだけど、今は流石に、そこまで頭は回らないらしい。

「んん……べつにそういう訳じゃあ…………」

 ハッキリとした物言いではないけれど、一応の否定は引き出せた。
 イッたばかりでふやけている愛羽さんならば、強めに押せば……大丈夫かもしれない。

「だったら、聞かせて?」

 優しくお願いをして、口付ける。去り際、僅かに唇を舐め、視線でも促した。

 それでも愛羽さんは迷う様子を見せていたけれど、名前を囁くように呼べば、とろりと溶けた瞳で私を見つめながら、ようやく唇を薄く開いた。
 すぅと空気が吸い込まれて、ぷるりとしたさくらんぼ色の唇が紡ぐ彼女のお願い。

「……いっぱい……ぐちゃぐちゃにして?」

 一瞬、何を言われたのか分からないくらいだった。

 だがその直後には、元々興奮に火照っていた身体が更に、カッと熱を帯びた。
 無意識に、私の呼吸まで、乱れてくる。

 もう、なんなんだ、このひと。可愛すぎる。そして今日は、エロ過ぎる。
 曰く「えっちな気分」だとか言ってたけれど……それが彼女をここまでさせているのなら、もうほんと、毎回「えっちな気分」になっていて欲しい。ああぁでも、毎回こんなにエロかったら私の身が持たないかもしれない。

 ずらずらずらと脳内で早口に捲し立てた私は、一度だけ瞬きと、生唾を飲み込んで、小さく頷いた。
 バクバクしていた心臓は、もっと大きく収縮し始めたような感覚が体内にある。

 ……もしかすると今夜死ぬのかもな。

 馬鹿な考えが脳裏を過ったけれど、イヤこんな可愛い彼女がいるのに死ねるかと即思考を打ち消した。

 心臓は相変わらずバクバクと鳴り続けているがあえて無視。そうしながら平静を取り戻したフリをして、私は愛羽さんにキスをした。
 唇を重ねる寸前、ゆるりと瞼が覆い隠していく蕩けた瞳が惜しい。
 もっともっとその可愛い瞳を眺めていたい。

 けれど、キスだってしたい。
 この柔らかくてふわふわの唇は幾度啄んでも飽きないし、飽きるどころか、更にもっとと欲が込み上げてしまう代物だ。
 そのうえ……。

「……ん」

 啄んでいた唇が開いたかと思えばその奥から姿を現す熱っぽい物体。
 迷いはなく、しかし、多少の焦らしは寄越すつもりなのか。愛羽さんの舌は私の下唇をつぅとなぞるばかりで、口内へは入ってきてくれない。

 私も愛羽さん同様に閉じた瞼が震えてしまう。

 ――……じれったい……。

 はやく、こっちに来てほしいのに。愛羽さんは焦らしてくる。
 きっと彼女は、私が深いキスをしたがっていると解ってる。そのくせこんなふうに焦らす意地悪だ。

「ん……」

 待っていられなかった。
 入ってきてくれないのなら、迎えに。

 そう思った私が愛羽さんの舌を捕まえようとキスをずらす。が、ひょいと引っ込んだ彼女の舌。まるで、アサリみたいだ、なんてイメージが浮かぶ。
 空振りに終わったキスだけど、只では引き下がれるかと愛羽さんの唇を食んでやる。唸るような息を鼻から抜けば、啄んでいる愛羽さんの唇の端が持ち上がった気がした。

 はっきり目で見た訳ではないけれど、今、笑ったな……?

 胸中でむぅと唸り、ならいいよ、と悔し紛れに言い捨てる。
 ならいいよ。こっちはこっちで、させてもらうから。

 まるで子供だ。
 されたから、やり返す。

 少し冷静を取り戻した方がいいと忠告が誰かから寄越されるけれど、私は構わず、愛羽さんの下着へ再び手を掛けた。
 腰骨を掠めながら指を掛けたそれを軽く引けば、愛羽さんの腰が浮かされる。
 そうした協力はしてくれるもののやはり恥ずかしさはあるのだろう。愛羽さんはちょっと強めに、唇を押しつけてきた。

 ――かわいい。

 つい、その可愛さに絆されてしまいそうだけど、私は気を引き締める。
 やられたんだから、やり返すぞ。倍返しとまではしないけど……それなりに焦らしてやるんだ。

 彼女の身体から取り去った下着をフローリングにぽとりと落とす。
 本当はクロッチの部分がどれだけ大変なことになっているのか確かめてみたかったけれど、改めて、検める暇がなかった。残念。

 だがまぁ、直接触れてみればその答えは自ずと得られる。後の楽しみが増えただけだと自分を納得させてから、愛羽さんの膝へ手を添えた。

 そこから太腿、そして脚の付け根を私の指先が辿る。それはもう、ゆっくり、ゆっくりと。

 さっき愛羽さんはあんな事を言ったくらいだ。だったらたぶん、早くあそこに触れて欲しくて堪らない。そういう気分なのだ。

 私の手が――いや、指が。
 待ち遠しくて、仕方がないんだ。

 だからこそ、こうして焦らしてやる。

 もっともっと、愛羽さんが私を欲しがって求めるように。

「……ん、ぅ」

 下着を脱がせる間も絶えることはなかった口付けだが、依然として、舌は互いにそれぞれの口内の中から出てきてはいない。
 ただ啄んで、食むだけ。物足りなさが募るばかりのキスだけど、きっと私以上にその感情を抱いているのは愛羽さんの方だ。

 だって彼女は上も下も焦らされているのだから。
 まぁ、上は、両者が焦らされているからイーブンだ。言葉を交わしてルール確認をした訳ではないけれど、どことなく、先に舌を伸ばした方が負け、という雰囲気が出来上がっている。

 そもそもこれは、愛羽さんがあんな意地悪をするからいけないんだ、と心の中で言い訳を広げる私だが、その実、早く彼女の舌が欲しくてたまらない。

 ――ねぇ、愛羽さん。……はやく。

 はやく負けてくださいよ、と言いたいところだが……もしそれを口にしたら、負けな気がする。これは相手に、いかにして欲しがらせるか。折れさせるか、だ。

 …………だったら、こうするしかないよな。

 脚の付け根の窪みを辿っていた指に、目的地を指定した。
 窪みをすすすと辿り、内太腿の根元へ。茂みの横を通り過ぎて、限りなく、そこの近く。いわば、隣。
 指の腹で、行ったり、来たり。決して濡れた部分には触れないよう、あえて避けながら。でもその周りは確実にうろつく。

 キスの最中にも関わらず、愛羽さんの息遣いがすこし乱れてきた。
 詰まるような、蹴躓くような。不安定な呼吸のひとの手が、私の腕をきゅっと掴んで、引く。

「ん、ぅ」

 何かを訴えているような声が聞こえた。
 だけどそれは……何を、もとい、どちらを求めているのだろう。私にはそれが判らない。

 だから啄むだけの口付けも、限りなく傍を行き来する指も、変化することはなかった。
 そのせいだろう。

 愛羽さんが顎を引き、キスを引いた。が、すぐ。

「いじわる」

 咎めるセリフをひとつ放ってきたかと思えば、頭の後ろを抱えて引き寄せられた。
 もちろん重なった唇は啄むことさえなく、私の口内へ侵入者。

 勝利を喜ぶ気持ちはあった。だけど、それ以上に、心臓の辺りがきゅんきゅんどころかぎゅんぎゅんする。

 だって、さっき。
 キスを解かれて、反射で開いた目。その視界に映ったのは、半眼の色気。
 咎めの言葉に賛同するような視線を寄越してくる愛羽さんの半眼。伏し目がちなのに、それでも私に向いた視線。

 上目遣いとも少し違うその見上げ方。
 たぶん私は生まれて初めて、そんなふうに見られたんだと思う。
 そんな半眼に初めて、出会ったんだと思う。

 大きな衝撃を受けていたのに、加えて、口内への侵入者。

 くにゅりと柔らかいくせに力めば先端は硬くなる。自在に動いてこちらの舌をあますところもなく舐めてくるのだから、堪らない。

「……ん、ん」

 タチだという事も失念しそうなくらいに、気持ち良くされる。
 待ち侘びていた舌に、弄ばれそうだ。

 危うく、上顎も攻め込まれそうになっていたところで、やっと私の心が落ち着いてきた。
 と、同時に浮ついていた四肢の感覚も戻ってきて、察知する。

 私の手を引き、自分の中心へと導こうとする愛羽さんの動きを。

 ぎょっとするよりも、なんだろうか、感動に近かったかもしれない。
 だって、こんなにも愛羽さんに欲しがってもらえるだなんて。
 しかも。

 ――今日……ほんと、えろい。

 いつも以上に、こっちが理性を保っておく事に苦労する。
 ゾクゾクして仕方ない背筋に妙な快感を覚えながら、私は彼女の舌を抜いた。銀糸が伝う唇を触れ合わせて拭い、「愛羽」と呼び捨てで先手を打ち込んで、主導権をしかと握り直す。

「触ってほしい?」

 低く問いかけると、見つめた先で潤んだ瞳は大きく揺れる。
 ぽってりとした下唇は特に二人分の唾液でてらりと鈍く光っていた。親指でなぞるようにして拭ってやれば、何故か愛羽さんの両手に、私の右手を捕まえられた。

「?」

 私の手首と、手のひらあたりをそれぞれ掴む彼女の小さな手は、いつもより体温が高い気がする。
 やっぱり愛羽さんも興奮すると身体が熱くなるんだろうな。そんなことを考えていたらいきなり、ぱくり、と指を咥えられた。

 ――え。

 と思ったときには熱い舌が、私の中指を包み込んだ。
 ちょ……っ。

「ん……は……ふ」

 ――……ぅ、わ……。

 小さく喘ぐような声を私の耳に届けながら、一本ずつ丁寧に私の指を舐めていく彼女。
 指の腹、側面、背。指の谷間。短く整えた爪と肉の間までも、ざらついた舌が丹念に撫でていく。

 極めつけは、私の指を舐めながら、見上げてくる、その表情。
 蕩けていて、それでいて、私を求めて、催促して焦がれているその目の色。

 じん、と私の下腹部が蕩けたのが、はっきり分かった。

「……いいよ」
「ん……」

 ここまでされては、もう、焦らせない。
 バクバクと耳の傍で鳴る心臓を聞きながら、私は下に手を向かわせた。

「ぐちゃぐちゃに、してあげる」

 貴女が、求めたように。
 ぐちゃぐちゃに。

 ここまできて緊張も無いだろうに、私は静かに深く息を吸い込んだ。

 彼女が濡らしてくれた指をあてがえば、自然と彼女が両脚を開く。
 その迎える動きは……私があまり経験したことのない類で、ドギマギしてしまいそうだった。
 こんな時役立つのは、テンションを下げる思考だ。

 ――慣れてるのが、私とだけなら良かったのにな。

 きっとこれから挿れるものを濡らしたのも、自然と脚を開いたのも、私が教えた訳じゃないし、私が慣れさせた訳じゃあない。

 すぅっと頭が冷えていく感覚を手にした私は、中心に中指をあてがった。
 ずるりと滑るような感触があるのは、唾液だけの効能ではないだろう。

 指の関節を曲げ、上下に筋をなぞってやれば、それだけで期待を募らせているそこはヒクと動いた。

 濡れた指と、濡れたそこ。
 少し力を入れただけで、するりと私の指は入り込んだ。

「はぁ……っ、ぅっ、ぁ、ア……」

 自ら指を咥えるほどに待ち侘びていた愛羽さんからは、すぐに甘い声があがった。
 口元を手で覆っているけれど、上擦った声は隠しきれていない。
 まだ、真ん中くらいまでしか入ってないのに。

 痛がっている様子はない。
 まぁ、今日は既に解してあるから、相当な無茶をしなければ痛むことはまずないだろう。
 でも、一応。

「痛い?」
「……た、く……なぃ……」

 口を覆う手の陰で答えた愛羽さんが首を振る。
 うん、やっぱり大丈夫なんだなと安心する傍らで、溢れ出る声をコントロール出来ないでいる愛羽さんから目が離せないことに気付く。

 釘付けと言って過言ではない。
 視線が動かせない。

 私の指が進むに合わせて呼吸が更に乱れたり、甘声が高くなったり、表情が切なそうに揺らいだり、様々な変化を見逃したくないと云わんばかりに、私は愛羽さんから目が逸らせなかった。

 ――可愛い。

 どうしよう。
 可愛いすぎる。

 先程得た冷静さが、あっという間に消失した気がする。
 ゆっくり、ゆっくり、と脳内で命じているのに、ナカを押し進む指は一気に突いてしまいたいと疼いているのだ。まるで冷静ではない。

 しかし辛うじて私は脳の命令通り、ゆっくり指を根元まで埋め込むことに成功した。
 そうされた彼女はというと、ぎゅうっときつく瞼を閉じ、下唇を噛んで耐えている。

 ナカは、とろとろで、あつい。

 ――触りたい……。

 ゾクゾクと湧き上がる感覚に背を押されるよう私は指を曲げた。もちろん急な動きはしない。
 当たり前のようこうしているけれど、ひとの体内へ指を挿入しているのだ。乱暴な動きなど絶対にしてはいけないし、それで気持ち良くなれる訳ではないから当然だ。

 ――まずは、挿れるときと同じくらい、ゆっくりと。

 
 慎重に、ぐぅっと指の関節を曲げていくと、内壁に指先が触れる。さらに曲げることでお腹側の壁を押しあげる形になった時、愛羽さんがイヤイヤと言うよう首を振って快感を逃した。

 切なげに両眉は寄せられているし、瞳は先程よりも潤んでいる。
 頬だって赤みが増しているうえ、吐く息は熱っぽい。

「そんなに、気持ちいい?」
「あっ、はぅ…んっ、きもち、い……っ」

 じゃあ。

「これは?」

 最奥まであった指を引いて、くん、と少し上を押し上げた。

「やぁっ! あっあっだめぇ……っ!」

 少し前は自ら中心へ導こうと引いた手を、今度は、押さえつけようとする愛羽さん。
 それほどに、快感が体内を走るのだろう。

 でも、だめだ。
 思わず押し返したくなるくらい感じていても、それは許してあげない。

 手首を押さえようとする愛羽さんの手を退けさせて、私は彼女に口付けた。
 荒い息遣いのひとの唇を奪い続けるのは忍びない。だから早めに切りあげるべくリップ音をたてて唇を解放し、間近で囁く。

「可愛いよ」
「んん……やだ」

 小さく拒否する彼女。
 何故だか、彼女はいつも、褒め言葉を否定する癖がある。
 嘘を言ってる訳でも、お世辞を言っている訳でもなく、ほんとに、可愛くて仕方がないから言ってるのに。

 まぁ、本気で嫌がっているようには見えないから、とりあえずそれは、置いておくとして。

「気持ちいい?」

 こういう事を聞きすぎるのもよくないかと思うけれど、やっぱり確認してしまう。

 気持ちよくなってほしいから。
 気持ちよくしたいから。

 痛みを与えたり、独りよがりなことはしたくないから。

「ん」
「よかった」

 彼女の返事に安堵と共に微笑んで、また指をゆっくり動かせば愛羽さんの表情が切なげなものに変わる。

「ぁ、あ……っ」

 嬌声をこぼし、腰をくねらせ、私に縋るよう手を伸ばしてくる彼女がたまらなく可愛くて、そして色っぽい。

 切なげだったり切羽詰まっていたり、表情を様々にとりかえるその顔をずっと見つめていたいけれど、もっと、気持ち良くなって欲しい。

 私は絶え間なくナカで指を動かしながら身を屈めて、彼女の胸の頂をぺろりと舐めた。

「っぁあ! んやっ、ァ、く……ぅっ、んんっ」

 喘ぎ声がいっそう忙しなくなり、私の肩を押し返すみたいに手でつっぱってくる愛羽さん。
 その手にはほとんど力が入っていなくて大した障害にはならない。

 だから構わず引き続き、胸の頂を舌で転がしていると、彼女の手が、私の肩を引っ掻きながら縮込まる。堪えきれない様子で握り締められた小さな拳は……もしかすると指が白むほどに強張っているのかもしれない。

「ヤッ……、あっ、んんっ、イっちゃう、アアッ」

 彼女の言葉を聞いた瞬間、私は頂から口を離し、蜜壷をかき混ぜる指の動きも停止させた。

「……え……?」

 忙しない呼吸の間に、拍子抜けした声。
 それは当然だろう。もう少しでイケそうだったのに、突然、動きを止められたのだから。

 ――あー……かわいいなァ。

 私はきっと、すごく意地悪な面を彼女に見せているだろう。
 愉悦に満ちた視線で舐めるように愛羽さんの汗ばんだ身体や、混乱の混じる婀娜を眺めていると思う。
 今ここに鏡があったとしても、あんまり見たくはないな。
 そう思いながら、口を開く。

「すぐ、イカせてもらえるとでも?」
「な……」

 彼女の蕩けきっていた表情が、一瞬で驚きに塗り替わった。
 そんな表情の変化も楽しみながら、私は自分の唇を舌先で濡らす。

 酷く、意地悪な仕草に映ったのだろう。愛羽さんの瞳が一瞬囚われた後に揺れた。
 これだけ彼女の意識が快感から逸れたなら、もう、いいだろう。

 私は再び指を動かし始めた。

「っひあ!? っく、ぁア……ッ」

 快感を止められた先程とは逆で、不意打ちで快楽へと突き落とされた愛羽さんは、目をぎゅっと瞑った。
 可愛い。そう思うと同時に、目を閉じて欲しくなくなる。

 こっちを。私を。見ていて欲しい。

「いっぱいぐちゃぐちゃにしてって言ったの、だれ?」

 注ぎ込まれる快感に背を反らしている彼女の顎をとらえて、引き戻す。
 強引な口付けでも、私の舌が触れれば必死で応じてくるところがまた、可愛い。

「そんなお願いするくらい、いっぱい、気持ちよくなりたいんでしょ?」

 ねぇ、と尋ねるように声を掛けているが、愛羽さんからの返答を必ず求めたいわけではない。答えられないだろうなと、それを前提にしながらも、いわゆる言葉責めに近い感覚で訊いているのだ。

 それに私の指はいっそう、粘着質な水音を立てながら蠢いている。指を締め付けるナカの壁のおかげで、時折ぐちゅりと大きく卑猥が鳴り、耳は犯された。

 それが愛羽さんの耳へも届いているかは定かではない。ただ、注ぎ込まれた快感が積もり積もって、嬌声の甘美さを引き上げているのかもしれない。
 しかし、ナカが締まるほどに。
 私が指を動かすほどに。

 呼吸を浅く忙しなくする愛羽さんが、私の名前を呼べば、ゾクリとする。

 見つめているだけでどうして、こちらまで、呼吸が乱れてくるのか。
 攻めているのは、私のはずなのに。
 こちらはただ指を動かしているだけで、彼女のように全身運動などもしていないのに。

「は……ぁ、……愛羽」

 息遣いに、声が混じる。これを甘声と言わず、なんと言い表すのか。
 しかし認めるのは躊躇う。
 だって、タチは私なのに。どうしてこちらが喘いでしまうのか、認め難い。

 だが。

 耳から脳を刺激する彼女の喘ぎ声に、頭がジンジン痺れてくる。
 きっと、どんな媚薬よりも甘くて、効き目があって堪らない。

「ダメ、あっ……く、アッ、ひぁっ」

 もう何度、身体を重ねたか、回数は分からないくらいだった。だからこそ、彼女のイイ所は把握している。

 指を入れきった、いちばん奥。
 ココが最も彼女を震えさせられる場所だ。

 手前のざらつく場所や、お腹側の内壁を刺激していた指をずるりと引き抜く。抜けた指が脱力をもさせたかのように「ぁっぁ……」と零す声は控えめだ。
 しかし休ませる間もなく、私は中指と人差し指を揃えてナカへ戻す。

 溜め息を混ぜたような嬌声を聞きながら、彼女のイイ所。いちばん奥を目指して、ぐぅぅ……と、押し入った。

「ぁ……っあ……ぁ。ン……ゃあぁ……っ!?」

 ――触れた。

 指の先。いちばん奥。
 私のうなじが何故か粟立つけれど、そればかりを気にしていられない。

 快感のあまり、また、私の手を止めようとする彼女。
 やんわりとその手を遮り、私は再び背を丸めて彼女の胸に顔を近付けた。舌を伸ばす先は、胸の頂。
 まずは周りをゆっくりとなぞったあとに中央を口に含めば、堪らないよう愛羽さんが声をあげた。

「すず……ヤッ、んんんっ」

 イヤイヤをするよう首を振り、それでも耐えられないのか、私の頭をかき抱くように抱え込む彼女。

「あんっ、ンンッ、や、イっちゃうっ……!」
「だから、駄目だって」

 イク寸前にこちらが完全に動きを止めると、ガクガクと脚を震わせる愛羽さん。
 やだ、むりと繰り返しながら、身体の中で渦を巻く快感を処理しきれずに、

「や、だぁ……っ」

 と、更に上擦った声で私へ縋る彼女。

 もう自分では歯止めが利かないようで、勝手に震えの起きる身体を持て余す彼女の姿に、私の頭がまたジンと痺れ、背筋には悪寒にも似た快感が走った。

「やめ、ないでっ……」
「なら、ちゃんと、お願いして」

 間髪入れずに命じれば、潤みきった瞳が私を見つめた。
 ヒク、と大きくナカが締まるのを指に感じたけれど、そちらへ視線は運ばず、真っ直ぐに愛羽さんを射抜いて、再度促した。

「言って?」

 潤みきった目は、私を縋るように見つめ、その唇からは普段からは想像の出来ないような甘くて淫らな言葉が零れ落ちた。

「イカせて……くだ、さい……」

 満たされた征服欲に快感を覚えながら、私はゆっくりと彼女に口付けた。

「いい子」

 汗で張り付いた髪を指先で払い、梳いて、額に口付ける。

「気持ちよくなって」

 そのセリフを皮切りに、再び手を動かす。
 彼女が愛液を溢れさせている蜜壷の奥、イイ所だけを刺激していく。 

「やっ、はぁぁっ、あっあっ、すずめ、ちゃ……っ」

 可愛い。そんな声で名前を呼ばれたら、たまらない。

「あたま、おかし…く…なるっ、やぁぁっ」
「なっていいから……イって?」
「やっやっ、んあっ、イク、イッちゃうっ…やっ、ァアアッ!」

 やはり、散々焦らしただけあって、達するのは早かった。
 身体を弓なりに反らせて、びく、びくん、と震える彼女。

 その姿、その声。

 それは私だけのもの。

「愛羽……」

 彼女の名を呼ぶだけで、私の呼吸が深く乱れた。

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