「……」
その予想にただ……甘んじていていいのか。
寄せられる好意を察知したアタシが、その好意を利用し、相手の理想の未来に寄り添う形で、今まで何人もと付き合ってきた。そして、…………別れてきた。
なにせ途中で、つまらなくなるのだ。
予想通りで、単純で。与えるだけで。包むだけで。見守るだけで。
そういうのは、もう、飽きた。
心臓の奥に苦いものが広がり、それを振り払うように閉じていた目を開けるのは、同時だった。
そしてもうふたつ、同時のものがあって、アタシは驚く。
「吸わないでください」
その声が耳を訪れた。
咥え煙草を奪い取られた。
咄嗟に、何も言葉が出ないくらいには、驚いた。
おとなしそうな彼女がそんな行動に出るなんて。
予想外すぎる彼女の行動に、沈黙が踊り場の二人を覆う。
けれどアタシは驚いたままでも視線は動かし、彼女の顔を見遣った。どういうカオをして、彼女がアタシの煙草を奪ったのか、気になったのだ。
……なんだか彼女は…………怒っている……?
何故?
そう考えるアタシは、ゆるく口角をあげた。
「どうして?」
沸いた疑問をそのまま口にした。
アタシの手にある携帯灰皿を見つけ、またもそれを奪い取り煙草を押し込む彼女は、やはりまだ怒っている。
アタシは重ねて、無言の看護師に問うた。
「どうしてアナタは怒っているのかしら?」
「井出野さんが体に悪いタバコを吸っているからです」
煙草の箱にも『健康に対する悪影響』なんて事が明記されているくらいだもの。確かにこれは体に悪い。
けれどアタシは首を傾げた。
「看護師と患者の関係はあるけれど、退院したら無関係の人間よ?」
無関係の人間にそこまで目くじら立てる必要があるかしら?
と、言葉を続けようとしたけれど、こちらを見つめる彼女の眼光の鋭さに、アタシは思わず口を噤んだ。
「関係あります」
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