※ 隣恋Ⅲ~のたり~ は成人向け作品です ※
※ 本章は成人向(R-18)作品です。18歳未満の方の閲覧は固くお断りいたします ※
※ 本章は女性同士の恋愛を描くものです ※
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~ のたり 31 ~
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じわ、と目の奥が膨らむような感覚と、鼻の奥がツンと痛むコラボレーション。
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――あ。まずい。
唇の端が震えてきて、本格的にまずいと察知する。
どこか他人事のようだけど、あ、まずい、ほんと、泣きそう。と胸の中で焦った。
額へのキスと、柔らかく髪を撫でてくれる手の優しさと温もりに、心臓のちょっと上あたりがきゅうううと痛む。
「すず、めちゃん」
――声、ふるえた。
はい、と返事をしてくれるのは落ち着いたままの声。きっと、わたしの声が震えているのは確かに聞き取ったはずなのに、彼女はその年齢らしからぬ落ち着きをみせて、わたしの額にもう一度唇を触れさせた。
「ちょっと、顔、みないで」
やっぱり、声は、ふるえた。
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もうすでに、鼻声。
涙はまだ零れていないけれど、この瞼を一度でも閉じてしまうと、目尻から流れ落ちるのは確実。
必死で目を開けて、どうにか滲んだ涙を目の奥に引っ込められないかと格闘しながら、心の端っこにある見栄で、泣き顔をみられたくなくて彼女にお願いした。
ひどい事をした彼女に対して、どの面下げてのお願いだと自分でも思うけれど、意外にもすんなりと雀ちゃんが「わかりました」と囁いてくれたので、ほっと胸を撫で下ろした。
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鼻が詰まって、口で呼吸を始めたわたしの額に唇を触れさせていた彼女は、少しだけ、それを浮かせて「でもね、愛羽さん」と言ってから、再度、ちゅ、と額にキスをした。
「見ない代わりに、好きにさせてください」
好きにさせて、って、いったいどういう……? 問いかけるよりも前に、彼女のキスが額から眉間に下りてきて、わたしは動きを止めた。
――ま、まって……そうやって顔を下におろしてくるってことは顔も見えちゃうから……っ。
言いたくとも、眉間から鼻筋、鼻のてっぺんと小さくキスを進行させてくる彼女の早さに、制止をかけるタイミングを失ったそのとき。
見開いたわたしの目には、瞼をしっかりと閉じて視界にシャッターをした彼女が映った。
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長い睫毛にどきりとした瞬間に、唇同士が軽く触れた。
雀ちゃんは、わたしの鼻が詰まっていることを見抜いているのか、ちゅ、ちゅ、と幼い子がするような小さなキスを唇に繰り返すが、決して、口全体を重ね合わせて呼吸を奪うことはしなかった。
その優しい気遣いに、また、喉元を締め付けられるような切なさが込み上げて、それと同時に、彼女への愛しさが胸の中心から溢れた。
片肘を着いて体を起こしている雀ちゃんのその脇の下に腕を回し、抱き着く。
わたしの頭を撫でていた手が崩れた体のバランスに慌てて、枕の横に手を着いた。
彼女からのキスを受けながらも、涙を零したくない一心で瞼を閉じなかったわたしは、雀ちゃんが決して目を開けないことを確信して、ぎゅっと瞼を下ろした。
思っていた通りに、両の目尻からぽろぽろと転がり落ちた涙が、片側は枕に弾けて音をたて、片側は運悪く外耳に溜まってしまった。
なんとなくある不快感を片耳を他所に、わたしは彼女とのキスに耽る。
決して濃厚と言えるものではなく、どちらかと言えば稚拙にも見えるキスだけど、愛情がこれでもかという程、ふんだんに盛り込まれているキス。
優しくて、愛しくて、わたしにとことん、甘いひと。
わたしが怒られてもおかしくない瞬間なんて何度もあっただろうに、彼女は諫める程度なもので、冷静にわたしを見つめて、酔っていることも、見えない体調不良とも言えるホルモンバランスの崩れさえも、見つけてくれた。
好き過ぎて、たまらない。
好きの気持ちが、止まらなかった。
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